InsurTechラボ 研究員のたなたかです。
この記事はInsurtechラボ3月アドベントカレンダー企画で「2022年度の学び」について書いています。(12日目)
社内で行われたハッカソンで実践して学んだ、アイデア創出に関するコツをご紹介します。
ハッカソンとは?
ハッカソンとは、新規ソリューションのアイデア創出を目的に、IT分野の技術者が集まり、定められた期間の中で課題に取り組むイベントのことです。アイデア創出以外にも、異なる背景を持ったメンバーと交流・コラボレーションを図ったり、新技術の学習自体が目的になる場合もあります。
今回、社内では以下のようなテーマでハッカソンが開催され、私も参加してきました。運営も社内メンバーで実施するなど、手作り感のあるイベントで、とても盛り上がり本当に楽しかったです。
- テーマ :「誰かと使いたくなるIT」
- 期間 :3日間
- メンバー:社内公募により、3〜5名のチームを複数編成
- 審査 :社外審査員と社員により、テーマとの整合性・技術の先進性・チームワークを評価
私たちが考えたソリューションアイデア
私たちのチームが考えたソリューションは、親子が使いたくなる家事お手伝いアプリでした。このアプリによって、パパとママが抱えがちな課題を一挙に解消してしまおうと狙いを持っています。
- 子供に「もっと好かれたい」と思っているパパと
パパや子供に「もっと家事をしてほしい」と思っているママ向けの - 「パパッと家事でき!クエスト」は、
- 家族の”できた!”と”笑顔”を増やす、家事クエストアプリです。
- 子供に積極的に家事をやりたいと思ってもらい、家事をパパママと行った楽しい体験に変化させることで、パパは子供に好かれ、ママは家事の負担を減らすことができます。
- 既存の家事お手伝いアプリが、お小遣いなどのインセンティブにより子供の動機を引き出すのと違い、
- IOT/AI技術を活用することで、現実世界でクエスト(家事)を探す楽しみを創出することにより、子供本来の好奇心や積極性を引き出すことが可能です。
審査の結果・・・最優秀賞&オーディエンス賞をダブル受賞!!
私たちのソリューションは、社外審査員の審査による最優秀賞と、社員によるオーディエンス賞をダブル受賞することができました!社外審査員の方からは、以下のようなコメントをいただきました。
発表したチームの中で、最も課題にアラインしていた。そのため、アイデアや具体的な解決策、プレゼンテーションがどれも素晴らしかった。
社外審査員の評価コメント
このコメントをいただいた時、やり遂げたことの嬉しさ・達成感と共に、「InsurTechラボでチャレンジし学びを得たことは、やはり有用だったんだな」と思ったことを覚えています。
コメントの中にある「課題にアラインしている」とはどのような状態か?ということ共に、チームの活動を振り返り、アイデア創出に役立つコツをご紹介したいと思います。いずれも、仮説検証を意識することで、満たすことができるものです。
コツ① 顧客の課題を捉えること
課題とは、顧客が抱えている深刻な困り事(ニーズ)を指します。顧客の置かれている環境や状況を詳細に把握する必要があります。課題を捉えずにソリューションを作った場合、いくら作り手が素晴らしいと思っても、課題を持った顧客が現れず使えないものになる可能性があります。
ハッカソンでは、限られた期間(3日間)の中で、アイデアを創出することが求められます。この状況では、本来行うべき顧客の分析や課題探索に時間を割くことができませんでした。
そのため、取り組む課題を選ぶ際に「私たち自身が課題に共感できるか?」という基準を設定しました。これにより、メンバー自身が課題の当事者となれたため、課題が曖昧になることを防ぐことができました。メンバーの過半数が小さい子供を持つパパ・ママだったため、課題について最も詳しい当事者が、課題を解決しようとしている状況を作り出せたということです。
かっこよく&大袈裟に言うと、スタートアップ企業の創業者が、自身が感じている課題に向き合い、起業を牽引していく姿をイメージしていました笑
また、カスタマージャーニーを作成し、解決すべき深刻な困り事はどこか?を議論しました。
顧客の置かれている環境や状況を掴み課題を抽出するためには、顧客に合うことが最も有効とされています。情報収集の手段としては、ユーザーインタビューや、行動観察調査、顧客の業務を受託し一緒に協業することなどが挙げられます。
また、顧客から得られた具体的な状況をもとに潜在的ニーズ(インサイト)を見つけ出すためには、カスタマージャーニーを作成したり、KJ/KA法などで、インタビュー結果を分析するのが良いとされています。
コツ② 提案価値(解決後の姿)を定義すること
ソリューションを作ることの目的は、顧客のニーズを満たすことです。課題を発見した時点で、解決手段の検討に奔走してしまいそうになるのですが、課題解決時にユーザがどのような状態になっているか?を定めておくことも重要です。考慮しなかった場合、ソリューションを利用しても解決に足らなかったり、過剰なプロダクトを顧客に提供してしまったりするかもしれません。
現状を整理したカスタマージャーニーをもとに、顧客(パパママと子供)が「課題が解決したら、どのような行動をするようになるべきか?」を考えました。行動を考える際は、解決手段の実現可能性にはそこまで言及せず、一旦理想を話し合うようにしました。これにより、ゴールが明確になり、特に重要な価値と、それを実現するために検討する必要がある実現手段(技術的アイデア)に集中することができました。
また、エレベーターピッチを用意しておき、上記の検討作業と並行してメンテナンスをこまめにすることで、課題との整合性やソリューションの優位性を意識し続けることができたと思います。
・顧客の課題を見失っていないか?
・課題と提案価値がズレていないか?
・競合のサービスには何が不足しているか?(私たちが優位になるカギは何か?)
コツ③ 検証目的(プロトタイプを作る目的)を見失わないこと
ソリューションのアイデアがまとまると、そのアイデアの有用性を確認することになります。アイデアを確認するためには、顧客がイメージできる状態までソリューションを形に落とす必要がありますが、その際に「何を検証・実証したいのか?」に応じて、検証方法を定めることが重要だと考えています。検証目的がブレてしまうと、プロトタイプがどこまでも肥大化しまうかもしれません。結果、仮説が間違っていたなら、非常に貴重な期間・リソースを無駄にしてしまうことになります。
ハッカソンの最終ゴールは審査員に評価を受けることです。審査員はユーザーではないため、仮説検証をすることはできません。そのため、スタートアップのピッチのおこない方や、初期時点でコンセプト検証をする方法を参考に、プレゼン戦略を練ることを試行しました。
審査員は、以下の2パターンです。①社外審査員に対して如何に課題の重要性に共感させ、解決後の姿をイメージさせることができるか?について、考えることにしました。
①社外審査員
・ペルソナと属性が異なる(子育て世代ではない)
・課題を抱えていないため、ソリューションに共感することはできないだろう
②社員
・ペルソナと属性が一致する人が多く
・課題を抱えている可能性が高いため、ソリューションに共感しやすいだろう
チームメンバーで相談した結果、プロトタイプはアプリの利用シーンごとに、ユーザーの行動変容をイメージできる動画が最適だろうと考えました。審査員自身が理解できなくとも、ユーザの課題が解決する姿を目の前で見れば、心に響くのではないか?という仮説です。
結果として、他のチームより少ない労力で、共感を得られるソリューション(プロトタイプ)を作ることができました。①・②の工夫と共に審査員に評価され、受賞に繋がったと考えています。
イメージしたのは、ディズニーランドに動物園ができた際の社内プレゼンのエピソードでした。実際に準備したものは、かなり違いましたが笑
上記の工夫した点はかなり例外的なケースでしたが、本来は検証目的を定めて、対応する方法や必要な準備を見定めていくことが、とても重要であると考えています。
単にプロトタイプやMVPといっても様々な方法がありますが、目的は「検証により仮説を見直すための学びを得ること」です。なので、プロトタイプは最小限の労力で必要な範囲だけを作るのが良いとされています。
検証作業はInsurTechラボの取り組みで繰り返し実施していますが、とても難しく、失敗や新たな発見の繰り返しです。複雑な要素を如何にシンプルにし検証をしていけるか、今後も試行を繰り返したいと思います。新たな学びがあれば、情報発信させていただきたいと思います。
おわりに
いかがでしたでしょうか。今回は、ハッカソンの経験を交えながらアイデア創出のコツをご紹介してみました。実業務と比較すると、とても簡単・単純な事例ではありましたが、Tipsの活用イメージが湧けば幸いです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。