「DX(デジタルトランスフォーメーション)」のその前に分析しよう自社の現状 第3話

登場人物
ZAI…  本名:図合(ずあい) 守、読みにくいので自らZAIと名乗る、48歳
      最近覚えた、「事象を分析するときのアカデミックな知識」を披露するが、
      分析自体は甘い傾向。
寺野 …  本名:寺野 中(あたる)、日本酒大好き、29歳
      勘が良く感性のおもむくまま分析を行う。口が悪い。

寺野くん、おはよう。調子はどうだ。

絶好調です!

よし。それじゃあ、いつもの始めるぞ。

その前に。今日は定時で帰らせていただきます。

たまには俺も誘えよ。。。

今日は酒屋に行こうかと一緒に行きます?鶴齢の特別セールやるみたいで。
早いもの勝ちのようなのでZAIさんに突撃してもらえれば助かります。

そこまでなのか。

いいえ、鶴齢は新潟のお酒でいろんなラベルの種類があって人気はありますが、
そこまでではないです。冗談です。

変なノリだな。少し気持ち悪い
じゃあ仕事を始めるぞ。もはやお決まりの前回までの内容だ。

営業企画と営業推進の秘密?

ZAI:いろいろ裏を取りたいから営業企画からだ。

<表1:過去10年(2013~2021)の販売実績>

※満足ひとり占めプランは、2020より販売単価を15,000円から10,000円へ改定。

<表2:営業所ごとの実績>

<2022販売方針(営業企画)>

2022年度の販売方針
・全体として42億円(2021年度比△5%)の売上を目標とする。
・「満足ひとり占めプラン」は、従来、インターネット販売としていたが、今年度よりチャ
 ネルを拡大し、コールセンターおよび営業所販売員も取り扱うこととし、前年比売上△5%
 とする。
・「ずっと満足プラン」および「ずっと大満足プラン」は、例年どおり前年比売上△5%を
 目標とする。

<2022販売方針(営業推進)>

2022年度の販売方針
・全体として42億円(2021年度比△5%)の売上を目標とする。
・「ずっと満足プラン」および「ずっと大満足プラン」は、例年どおり前年度並みを

 目標とする。
・「ずっと満足プラン」および「ずっと大満足プラン」は、既契約者営業に重点を

 置くこと。
・尚、今年度より「満足ひとり占めプラン」の販売が可能となる。

本当に10年連続で売上増になっていますね(表1橙色部分)。
この資料で今までの疑問のほとんどを解消できそうですよ。
まず、契約件数が増大していることについて。  
「満足ひとり占めプラン」と経常売上という2つのポイントがありますね。
2014年から「満足ひとり占めプラン」の販売を開始していますが、売り切り
商品ですね。
加えてインターネット販売専用商品のようで営業推進部門の管轄外だったよう
ですね。しかし今年度より営業推進部門の販売対象に入ったようです。
もう1点が「ずっと満足プラン」と「ずっと大満足プラン」は、最初は契約だけ
でランニングで収益をあげる商品ですね。
使った薬分だけ料金を支払うという商品のようです。
2つのプランの違いは薬の種類や量が違うとパンフレットに書いてありました。

寺野くん、この会社のことちゃんと調べているじゃない。

折角なので業界研究しましたよ。
自分の常識だけで情報を解釈すると誤った方向にいきそうですので。
この会社は業界の中では非常に人気があるようです。
契約すると、用があるとき即ち薬の補充が必要なときにコールセンターに連絡
すると近くの営業所から販売員が薬を持ってきてくれる。
連絡しなくても2か月に1回は販売員から連絡して、薬の状況を確認してくれる。

販売員によっては、毎月連絡・訪問して他のオススメの薬や健康食品などを紹介
するような遣りて販売員もいるようです。

その現場の販売員が疲れ切っているわけだな。

そうですね。表1を見ると、新規契約は実質増えていないですが、既契約からの
売上件数が右肩上がりですね。

「満足ひとり占めプラン」は、すごい勢いで売れていますが昨年まではチャネルが違いますので販売員には影響が無かったみたいですね。

そういうことか。新契約が増えているのに申込書のコピー数は増えていない
謎が解けたな。

そうです。現場の販売員がサボっていたわけではなくて、実際に取り扱う
新契約は増えていない。
だけど既契約からの販売は増えているため、取り扱う全体の販売は増えて

いるのに、現場の人数は減らされている(第2話を参照)。
加えて今年度から「満足ひとり占めプラン」も売ることになる。
昨年度の数字をパッと軽く計算しますと、新既あわせて年間1人あたり

1,000件の販売。
年間240日として1日あたり平均で4案件ですね。顧客都合もあるので

土日も働いているかもしれません。
問合せだけで結局販売につながらないケースや営業して契約につながらない

ケースは見えないですから、相当負担感が大きいように想像できます。
その割に辞める人が少ないのは救いですね。
今から辞めていくのかもしれませんが。実態をつかむために販売活動状況が

見たいですね。

顧客データの管理と一緒に確認するよ。

単価を安くして件数が増えている件は、2020年度から「満足ひとり占め
プラン」のことですね。前年の件数が停滞しているのでテコ入れ策ですかね。
2020年度の販売件数は、前年の倍になっていますね。売上はグッと伸びて

いますが、収益は少し下がっていますね(表1黄色部分)。
収益率が低い商品になったようです。とは言え、この10年世間ではいろいろ

ありましたが、販売の数字全体としては全く問題ないように見えますね。
若干、気になるのは営業企画の販売方針を営業推進がさらっと変えていること

ですね。

こんなことして良いのかな。営業企画は知っているのに黙っているのかな。
営業企画は、「ずっと満足プラン」と「ずっと大満足プラン」を『例年どおり』
前年比△5%販売と言っているのに、営業推進では、『例年どおり』前年度並みって言っている。普通は露見して揉めそうだけどな。

何かありそうですが、そこまで私たちが踏み込まなくても良い気がします。
今のところ見える悪影響は無さそうですし。

そうだな。他の確認で紐付くかもしれないがそうじゃなければ、これ以上掘り起
こすのはやめよう。

うん?そういえば、単価を安くした商品は、販売全体の利益率に影響を与えるくらい利益率が低いのでしょうか。
「ずっと満足プラン」と「ずっと大満足プラン」と内容が違う、ということですよね。

それか仕入れ先が違う、ということかな。訊いてみるか。

ついでに、インターネット販売で使っているサイトの開発にはどれくらいお金が
かかっているか念のため訊いてもらえますか。

販促費とかになって見えないことがよくありますので。

わかった。それも訊いておく

この調査の目的は何だ?深まる謎。。。

今更なのですが、この規模の会社の社長が収益の変化の原因を知らない、ということはあり得るのでしょうか。

ここまで会社を大きくしたのは今の社長のようだ。
その人が社内のこと特に収益に関することを知らないというのは確かに妙な話に
思える。
Aは、英田(あかだ)というのだが、『経営総務部長兼社長秘書として社長に

試されているのか』と訊いてみたが返事がなかった。

まさか社長交代ですか?!

よくわからないし、本人はそういうことに興味があるタイプでは無いな。

これもまた私たちが踏み込まなくて良い話題でしたね。調査に集中します。

いや、あいつが社長になったら飲み代を奢ってくれるかもしれないから重要事項だ!

発想がセコイ!小さい!ミジンコです!

うぐぅ。今回はここまでだな。