新規事業の成功率を高めるPMF(プロダクトマーケットフィット)とは?

Insurtechラボ3月アドベントカレンダー企画 13日目の記事です。)

みなさま、こんにちは。アオキです。
ラボの活動では2月末から新しいプロジェクトがスタートしました。
新しいプロジェクトではタイトルの「PMF」というワードが随所に出てきたこともあり、手元にあった「PMFの教科書」を見直すことにしました。
新規事業やプロダクト開発において本書に書かれていることに沿って進められると、成功率を高められると改めて感じましたのでご紹介したいと思います。
本記事ではPMFのほかフィットジャーニー、バリュープロポジションという単語が出てきますので、それぞれかいつまんでエッセンスをお伝えできればと思います。

PMFとは戦略の枠組み

PMFとは「Product Market Fit」の略称でプロダクトやサービスが市場に受け入れられている状態のことを意味しています。
スタートアップやネット界隈を中心に目にふれる機会が増えてきましたが、一般的にはあまり認知されていないのかもしれません。

PMFの考え方はアメリカの投資家マーク・アンドリーセン氏が様々な企業を見てきたなか、PMFが新規事業の成否を左右する要素として広められました。
スタートアップにしても大手企業の新規事業にしても大きなリターンを狙うとしたら、初期から積極的に投資を行うため、赤字スタートになりますが、大手企業といえども経営資源は有限です。

そこで限られた経営資源をどこに使って、どこに使わないのか取捨選択が欠かせないのですが、選択における意思決定の枠組みが後述のPMF到達までのフィットジャーニーになり、戦略を考える際の指針になります。
戦略の重要性はトライバルメディアハウス代表の池田氏もコチラで書かれていますので、併せて参考にしていただればと思います。

PMFまでの道のりフィットジャーニー

フィットジャーニーとはPMFに到達するまでのフェーズを「CPF/Customer Problem Fit」「PSF/Problem Solution Fit」「SPF/Solution Product Fit」と最後にPMFの4つに区切り、各々のフェーズで何をやるべきか示したものになります。
詳しくはコチラの記事を参照にして頂ければと思いますが、初期のフェーズでは顧客ニーズの検証が推奨される活動とされています。

いまいるフェーズがどこか把握しておくと、計画を立てるときにとるべき行動が明らかになってきますし、新しいことを始めるとやったほうがよさそうなことを片っ端からやりがちですが、フェーズによってやるべきこととやらないことを明確にすることがPMFの到達に向けた第一歩です。

PMFまでに気を付けること

「PMFの教科書」ではPMFに到達できずに失敗する理由が掲載されているのですが、私も過去同様の失敗をしたことがありますので、3つほどご紹介します。

PMF達成に必要ないことに時間をつかってしまう

「PMFするまでコードを書くこととユーザーの声を聞くこと以外なにもするな」とスタートアップの世界でいわれているように、顧客の声を聞くこととプロダクトを開発することがPMFに到達するための最も重要な行動とされています。

一方PMFを遠ざける行動としては仕組み化・組織づくり・権限委譲・カンファレンス参加などが挙げられます。
これらの活動に時間をつかうと試行錯誤の回数が減り、PMFの達成が遅れ、資金が底をついてしまいます。
また投資家や社内調整のため資料が必要なこともあるかと思いますが、内部に向けた資料の作成に時間をかけるより、初期フェーズほど外に出て市場や顧客に触れることに時間を使う必要があります。

PMFしていないのに営業・マーケティング投資を始めてしまう

PMFしていない事業でオウンドメディア(Webサイト・SNSなど)やペイドメディア(Web広告・屋外広告など)を改善しても受注にはつながりません。
事業がうまくいってないと感じて営業・マーケティングに費用を投下すると、お金がいたずらに減ってしまうため、プロダクトやサービスが顧客ニーズにフィットしているかをいま一度検証するようにしましょう。
本書では「バケツの穴をふさいでから投資する」と書かれており、わかりやすい表現ですね。

意思決定や打ち手の成功確率にこだわりすぎてしまう

新規事業を立ち上げているフェーズで既存事業のような精度を求めてしまうとPMF達成が遅れます。
例えばWebサイトに掲載するイラストや細かい文言にこだわることは一見大切なことのように見えますが、PMFに到達するまでは打ち手の数とスピードに比重を置いた仕事の進め方を心がける必要があります。

作り事が中心の業務では細かいことが気になってきますが、「神は細部に宿る」にもとづいて完成度を高めていくのは未成熟な事業では望ましい活動ではありません。

バリュープロポジションの落とし穴

バリュープロポジションとは「自社が提供できて、競合が提供できない、顧客が求める価値」と定義されています。
バリュープロポジションが明確なほど、事業の方向性が明確になり、営業でも説明しやすく、事業の成功に欠かせない要素とされているのですが、本書ではバリュープロポジションをつくるときに陥りがちな3つの落とし穴が掲載されているので紹介します。

想いが先行してしまう

起業家や事業責任者の想いが先行され、顧客ニーズが置きざりにならないように注意が必要です。
先端テクノロジーや流行にのっていようと顧客が欲しがらなければ意味がありません。

既存のアセットに引っ張られてしまう

自分たちが持っているアセット(顧客データベース、技術、営業網、マーケティングノウハウ)を活かそうとして、顧客ニーズを置きざりにしたプロダクトをつくってしまわないようにしましょう。
既存のアセットが大きければ大きいほど、この落とし穴に陥りやすい傾向があります。

自社のケイパビリティが追いつかない

顧客ニーズに幅広く対応できればいいのですが、すべてに対応しようとすると自社のケイパビリティ(得意とする組織的能力)を活かせなくなります。
求められる価値や機能は多岐にわたるため、すべてに対応しようとせず、どのセグメント・どのニーズに応えるか取捨選択が必要になります。

まとめ

新規事業を航海に例えると目的地がPMFの達成であり、フィットジャーニーは羅針盤になるかと思います。
日々のアクションがPMFの達成に向けてベストになるよう「PMFの教科書」が手元にあると安心するとおもいますし、関係者間で目線をあわせるのに本書を活用するのもいいかもしれませんね(^^)