この記事はDevLoveのアドベントカレンダー19日目の投稿になります。Insurtech研究所長のたけひとです。「楽しい○○」というテーマでしたが、2022DevLove 3つ目の投稿になります。よっぽど仕事が楽しいんですかね・・・・・・・・。
さて、新規ビジネス検討を実施する際には方向性を1枚にまとめてメンバーで共有することが重要です。そんなときに有効なのが「キャンバス」になります。
Insurtechラボとしても後述する「仮説キャンバス」を何回も作ってきました。この記事では、「仮説キャンバス」だけでなく、私自身の「キャンバス」との出会いについても、まとめてみました。それでは、以下楽しいキャンバスライフのご紹介です。
最初のキャンバスライフ(ビジネスモデルキャンバス)
キャンバスと言えば、まず「ビジネスモデルキャンバス」を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか?私もちょうど10年前くらいに「ビジネスモデルキャンバス」がブームになった時にセミナーや研修で何回も作ってみました。最初にビジネスモデルキャンバスを知ったときは、こんなに簡単にビジネスを1枚で表すことができるのか?と衝撃を受けたのを覚えています。
ただ、いざ自分で作ると、とにかく難しくて筆がのらなかった印象です。何個か業界の事例を基に作成はしてみるのですが、「業界理解につかうものなの?」と、実際に自分の業務にまで活かすことはできず、それ以上深掘りせずにそこから約10年キャンバスからは離れています。
実際出来上がっている完成形を見ると非常にわかりやすいキャンバスなのですが、わからない中でだんだんとキャンバスを作り上げていくという感覚まで持てず、挫折したのを覚えています。
ビジネスモデルキャンバスについては他の本と大きさが違う「棚にしまいづらい本」として塩漬けにされておりました。
大きさが微妙なビジネスモデルキャンバス本
リーンキャンバス
その10年後、世の中はDXブームとなり、新規ビジネス企画が重要となりました。リーンスタートアップがブームになる中で、新たなキャンバスの「リーンキャンバス」が出てきます。リーンキャンバスは、ビジネスモデルキャンバスから、スタートアップや新規事業のポイントに沿って修正されたキャンバスになります。
「顧客の課題」や「ソリューション」、「優位性」といった点に着目することで、PSF(Problem-Solution-Fit)ができるかを素早く確認できるキャンバスだと思います。
ただ、リーンキャンバスもビジネスモデルキャンバスも全部入力された完成形のイメージとしては、素晴らしいのですが、わかっている情報が足りない中で作り始めるのが難しいと感じました。これは単なるスキルの問題も大きいと思いますが・・・・。
仮説キャンバス
そんな中でおすすめのキャンバスが今回のテーマの「仮説キャンバス」になります。
仮説キャンバスは市谷 聡啓さんの書籍:「正しいものを正しくつくる」でも説明されているキャンバスでリーンキャンバスをもとに修正されたキャンバスとなります。
リーンキャンバスよりさらに書く欄が多く、ちょっととっつきにくい気もしますが、書いて見ると非常におすすめのキャンバスになっています。こちらのキャンバスのおすすめポイント3点になります。
①.CPF⇒PSF⇒SPF⇒PMFに関する項目が網羅されており、1枚で確認できる
・Cusutomer-Problem-Fitについては、お客様の状況/傾向に関して、顕在課題/潜在課題があるか?また代替手段とその問題は何か?ということを整理することで確認できます。
・Problem-Solution-Fitについては、課題と実現手段/提案価値が合っているか?で確認できます。
・Solution-Product-Fitについては提案価値⇔実現手段⇔優位性で確認できます。
・Product-Market-Fitについては市場規模⇔ビジネスモデル⇔評価指標⇔実現手段で確認できます。
このように、ビジネスグロースまでの押さえるべき点を効率よく押さえることができるキャンバスになっています。
②.どこから入力してもよく(?)、着手しやすい。また入力した後、整合性を注意して修正していくことで全体をとらえやすい
・キャンバスについてはユーザーや課題から入力することを推奨するものの、どこから入力していっても構いません。また、最初に作成するキャンバスは一定空項目があってもよいので、気軽に作成することができます。
気軽に作成してからが、このキャンバスの本領発揮です。
記載した内容同士の整合性を評価することでビジネス全体をブラッシュアップすることが可能です。下記のような項目ごとの整合性を見ながらキャンバスの内容を変えていきます。
整合性を見る項目 | 整合性を見る内容 |
目的と提案価値 | 提案価値が自社の狙いと合致しているか |
実現手段と提案価値 | 提案価値が実現できそうか |
優位性と提案価値 | 提案価値実現に優位性は有効か |
評価指標と提案価値 | 提案価値が有効かどうか判断できる指標になっているか |
提案価値と顕在課題 | 課題は解決状態になっているか |
顕在課題と潜在課題 | 潜在課題がない場合は理解が足りていないのでは |
ビジョンと顕在課題 | 課題解決を繰り返すことでビジョンに到達できるのか |
顕在課題と代替手段 | 現在の手段でどの程度解決できるか |
顕在課題と状況 | 該当の課題が最も発生する状況を捉えられているか |
ビジョンと状況 | 現状とビジョンの距離の現実感は |
状況とチャネル | 効率よく出会う手段があるか |
潜在課題と傾向 | 傾向は潜在課題を回避するための現れではないか |
実現手段と傾向 | 利用者のリテラシにあっているか |
ビジネスモデルと市場規模 | 期待するビジネス規模になるか |
傾向と市場規模 | 該当状況が当てはまるセグメントか |
この整合性に対しての問いを自分に投げかけることでだんだんとキャンバスがブラッシュアップされていきます。
③.目的やビジョンといった項目があることで、自分達の想いを乗せやすい
・プロダクト作成に関しては、自分たちの想いがかなり重要です。PMFできるか?という点が重要なポイントなのですが、そこまで頑張るためにも自分たちのサービス/会社に対するビジョンやユーザーにどうなってほしいか?といった想いが肝となります。
このキャンバスの一番上にある「目的」「ビジョン」がそういったことを書く欄なのですが、この欄があることでビジネスモデルキャンバスやリーンキャンバスではなかったプロダクトにかける想いを文書化できることができます。
進んでは戻る辛い?キャンバス検討もやりきろうと思えるのです。この点がこの「仮説キャンバス」で一番おすすめの点になります。
その他キャンバス_リーンUXキャンバス
仮説キャンバスと出会った後の話ですが、リーンUX第3版に記載されているのが、リーンUXキャンバスです。こちらは特にユーザーの視点に立ち、小さく仮説検証を回すということに特化したキャンバスになっています。リーンUXでは、まず仮でもペルソナを立てて、仮説検証を回しだすことを修正しています。こちら「仮説キャンバス」で整合性を取りながら修正していく作業と似ていると思いました。MVPとしてどのように検証するか?を記載できる所が仮説キャンバスにはない主な特徴だと思います。
その他キャンバス_ラディカル戦略キャンバス
こちらも仮説キャンバスの後ですが、ラディカル・プロダクト・シンキングという本で、「ラディカルビジョンステートメント&RDCL戦略キャンバス」というキャンバスが紹介されています。これは、プロダクトを創るうえではビジョンが何より大事といった視点で作成されたキャンバスで、ビジョンと真の問題点、デザイン、能力、ロジスティックスを整理しています。仮説キャンバスがビジョンと目的を記載する点についてさらに強く意識したキャンバスになっていると思います。
まとめ
ということで、新しいキャンバスを見る中でも、「仮説キャンバス」がかなり良くできた有用なツールだと改めて感じました。
ただし、私自身、まだまだ効果的にキャンバスを使って仮説検証を回していくところは修行中です。引き続き研鑽していきたいと思います。また気になるキャンバスがあれば紹介します。それでは皆様も楽しいキャンバスライフをお楽しみください。
読んでいただき、ありがとうございました。
①.CPF⇒PSF⇒SPF⇒PMFに関する項目が網羅されており、1枚で確認できる
②.どこから入力してもよく(?)着手しやすい。また入力した後、整合性を注意して修正していくことで全体をとらえやすい
③.目的やビジョンといった項目があることで、自分達の想いを乗せやすい