ウォーターフォールのPMがスクラムをやって感じた戸惑い

Insurtechラボ兼任研究員のたかのです。
この記事は2022Insurtechラボアドベントカレンダーの11日目の投稿です。

私は今までウォーターフォール一筋で、開発者から叩き上げでプロジェクトマネージャー(PM)になった人間です。一応、ITSSのLv5という認定を受けていて、社内のハイエンドプレーヤーという事になっています。

こんな私が初めてスクラムをやってみて感じた事をシェアしてみたいと思います。

1.私がウォーターフォールのPMとしてやってきた事

QCDS(品質/費用/納期/スコープ)を計画通り達成することでした。普通か!!!

でも、プロジェクト開始時手でQCDSが明確な事って少なくて、お客様である保険会社と対話しながら落としどころを探して計画していきます。(←価値はなんだ?
そして、どんなプロジェクトでも絶対に計画通りに進みませんので、予防的に監視や対策、対処療法的にリプランに奔走する訳です。(←可視化・改善をしよう

この活動をプロジェクトメンバーに伝播させるために、チームビルドをしたり、ステークホルダーと関係構築したりする、と。てな感じでメンバーの先頭に立って、どんな状況でも粘り強く苦境を乗り切る、この辺りがPMの腕の見せ所でした。
もちろんイテレーティブさは希薄で、問題が起こらない限りはQCDSやそれに基づく計画は見直しにくく、変更するには絶対的な根拠が求められて、前向きな変更ですら簡単には実施できずにやる気を失った事もありました。

しかしこれはPMと一部のリーダの活動であり、現場メンバーにはあまり目に入らなかったでしょう、、、むしろ、計画を指し示す事で現場メンバーが目の前の開発タスクに没頭すれば良い環境を提供してきました。

結果として孤独を感じたり、ダークサイドに入って現場メンバーへ不満が募る事もありました。

2.スクラムをやってみた戸惑い

最初の戸惑いは、スクラムマスタ-(SM)はPMとは違って「スクラムチームのサポート役・調整役・ファシリテーター」という点。
プロジェクトである以上、PMが考えてきたような事を無視する訳にはいかない中で、誰が考えるのか??

これは結構早めに解消して、PO/SM/開発者みんなが意識するんだと思った。
・・・いや、意識せねばならないという事を理解しただけで、解消はしてないかも。

プロジェクトマネジメントが、役割に付随する活動ではなく、ちゃんとスキルのひとつになったんだなぁ、、、と思って今まで覚えていた違和感が少しクリアになった気分。

次の戸惑いは「PMだった自分はスクラムチームの中でどう活躍できるか」という点。
PMが意識する事は、PO/SM/開発者みんなで意識するのだとすると、元PMは何ができるのか??

これは全く解消していないですが答えは出ていて、価値を生むスキルが別で必要なんだろうな。

PMのスキルを応用した機能発揮に最も向いているのがSMだと思っています。そのため開発手法をアジャイルに変更する時にPMの人がアサインされるケースが多いんだと思う。
この時にコンバートし切れずに今まで通り行動するのが、PMとSMが混同される理由の一端なのかもしれません。

私個人としては折角の勉強のための研究所なので、POのスキルも得ようと思っている今日この頃。という事で、解消に向けては道半ばだけど、目標感は持てている状態。

最後の戸惑いは「価値ってなんだ」という点。
アジャイルでは価値を追及するという事になるのだけど、それは何なのだろうか。PMをやってた頃はQCDSを意識していれば良かったのだけれど。

これは解消するどころか、永遠のテーマのような気がしてきています。
PMBOK第7版では「価値はプロジェクト成功の究極の指標である」に変更されましたが、
それまでの『QCDS』が否定された訳ではないと思いますが『それだけじゃないよ』という意味である理解。ちょっと価値を概念的に捉えてみました。

ご参考:ウォーターフォールはもう古い?PMBOK第7版よくわかる解説

最上位の『感動』を目指してカタチの見えない深淵に踏み込んでいこうと思います。

蛇足ですが、PMは計画した通りを目指すのでプロジェクト開始後に『感動』を生むのは中々難しい、、、私が見た事あるのは、致命的に大炎上したプロジェクトを鎮火したときぐらいです。
(とはいえ、これは大きなマイナスをゼロに近づけているだけですが。)

という意味から、今まで出来なかった良いチャレンジになると思って前向きに捉えています。

3.この後のInsurTechラボ活動について思うこと

InsurTech研究所では「B to B to C」のビジネスを志向していますが『真ん中のB』が曲者です。顧客にアジャイルの考え方を理解してもらう事で建設的に議論できるようになりますが、彼らの価値(極論としては『儲かるか』かな)を否定する事はできません。

結果として『真ん中のB』のスポンサーはプロジェクトを進める上での色んな制約を与えてきます。ステークホルダーが増えれば増えるほど、落としどころを見つける事の重要性・難易度が上がって来ます。(←ウォーターフォールPMの主戦場ゾーン

今のInsurTech研究所はたけひと所長が『真ん中のB』を兼ねているようなカタチになっているので、落としどころを見つけやすいですが、実際のプロジェクトでは対立関係が生まれる事もあるでしょう。
、、、元PMが最大限チカラを発揮できるようにスクラムに適応して、その時に備えたいと思っています。

という事で、いろいろと戸惑いを感じながらもウォーターフォールのPMが、スクラムチームメンバーにコンバートをしている過渡期のお話でした。