プロダクトバックログ(PBL)とは
機能や技術的改善要素など、開発チームが対応すべきすべての項目を優先順位をつけて一覧にしたものです。
これらの項目はプロダクトバックログアイテムとして管理されます。プロダクトバックログアイテムには要件、機能、受入条件、優先順位の情報が含まれます。
プロダクトバックログアイテムはユーザーストーリーを元に作成されます。ユーザーストーリーとプロダクトバックログアイテムは「1:n」の関係になります。すべてのユーザーストーリーをバックログ化する必要はありませんが、バックログの総量を把握しておくことでリリースの見通しは立てやすくなります。
プロダクトバックログは、ステークホルダー全員が参照し、現在のプロジェクトの状況が把握できるようにします。
誰でもプロダクトバックログアイテムを追加することはできますが、優先順位は最終的にプロダクトオーナーが決定します。
プロダクトバックログから、対象のスプリントで実施すべきプロダクトバックログアイテムを抽出したものをスプリントバックログといいます。
プロダクトバックログの例
まずはプロダクトバックログを作成する前段階の例です。ユーザーストーリー(濃い黄色付箋)ごとにプロダクトバックログアイテム(薄い緑色付箋)が洗い出された状態です。1つのユーザーストーリーに対し、複数のプロダクトバックログアイテムが存在することがわかります。
上記付箋を整理し作成したプロダクトバックログの例です。個々のプロダクトバックログアイテムに関して、受入条件(青レーン)と優先順位(上のものほど優先)が設定されていることがわかります。
スプリントバックログの例です。プロダクトバックログで管理しているバックログアイテムのうち、当該スプリントで実施するものを抽出しています。プロダクトバックログアイテムのSp(ストーリーポイント)が見積もられ、タスクの洗い出しが完了しています。
スプリントバックログでは、タスクごとに担当者や進行状況が一覧できるように管理されています。
プロダクトバックログアイテムで整理するポイント
整理する項目 | 整理する内容 | 目的 |
---|---|---|
アイテムの内容 | 何を実現するバックログアイテムか | 実現したいことを関係者で共有できるようにする |
対象者 | 誰のために実現するのか | 誰に価値を届けるためのバックログアイテムなのかを明確にする(リリース後誰からフィードバックを受けるのかを明確にする) |
価値 | アイテムを実現することでユーザーに届けたい価値 | 価値を明確にすることで、価値を生まない作業を抑止する |
受入条件 | アイテムの完成を判断するための確認項目 | 満たすべき要件を明確にすることでプロダクトオーナーと開発チームの齟齬をなくす |
見積り | アイテムの大きさ(ストーリーポイント) | アイテムの実現にかかるコストを明確にする |
優先順位 | プロダクトオーナーが完成させたいアイテムの順序 | 何から着手するのかを関係者で共有し、価値を生まない無駄な作業を抑止する |
ビジネス価値の見積り | アイテムがリリースされることで得られる収益や費用削減効果 | 投資対効果を明確にすることで優先順位を判断する際の精度を上げる |
ユーザーストーリーからプロダクトバックログを作成する際の観点として、バックログアイテムの「INVEST」という考え方がある
(INVESTはあくまでもプロダクトバックログアイテムを作成するための指針であり、完璧に満たさなければならない、というものではない)
INVEST | 説明 |
---|---|
Independent(独立している) | バックログアイテム同士の依存関係が少ないこと |
Negotiable(交渉可能) | プロダクトオーナーや顧客がバックログアイテムの内容を理解できること |
Valuable(価値がある) | バックログアイテム単独でユーザーに価値を提供できること |
Estimable(見積り可能) | 見積りするのに十分な情報があること |
Size(適切なサイズ) | 優先順位に対して適切なサイズになっていること、優先順位の高いバックログアイテムは開発チームのベロシティに対して十分小さいこと |
Testable(テスト可能) | バックログアイテムが完成したかどうかをプロダクトオーナーが判断できること、受入条件が明確で受入テストができること |
なお、作成したプロダクトバックログについては以下の観点を意識して管理します。
1 | プロダクトバックログは常時変化していることを認識すること |
2 | プロダクトバックログアイテムの優先順位を継続的に付け直すこと |
3 | 次のスプリントのためのプロダクトバックログアイテムを継続的に準備すること |
4 | プロダクトバックログの項目の個数は60~70項目までにすること |
5 | プロダクトオーナーは開発チームと一緒に毎週全項目の見積もりをしなおすこと |
6 | 次の3スプリントで何を出荷するか組織の中で常にコミュニケーションすること |
7 | 顧客と管理職をプロセスに頻繁にまきこむこと |
8 | プロダクトバックログアイテムの締め切りや重要性について知ること |
9 | 新しいプロダクトバックログアイテムは古いプロダクトバックログアイテムと比べてROIが高いかチェックすること |
10 | スクラムプロジェクトは予算内で期限までに出荷しなければならない、ということをはっきりと認識すること |