「DX」のその前に分析しよう自社の現状

登場人物
ZAI… (本名:図合(ずあい) 守、読みにくいので自らZAIと名乗る、48歳)
     最近覚えた、「事象を分析するときのアカデミックな知識」を披露するが、分析自体は甘い傾向。
寺野 … (本名:寺野 中(あたる)、日本酒大好き、29歳)
     勘が良く感性のおもむくまま分析を行う。口が悪い。

ZAI:寺野くん、やってほしい仕事があるんだけど。

寺野 :ふぁい。う、気持ち悪いです。

ZAI:また二日酔いか。

寺野 :純米酒は、次の日残らないってこの前ZAIさん、言ってませんでした?

ZAI:醸造アルコールと比較すれば、という話で。どれくらい飲んだんだ?

寺野 :10合です。「鍋島」旨かったです。

ZAI:それ1升って言えよ。純米酒云々なんてもはや木っ端微塵だな。

    で、仕事はできそうか?

寺野 :気合で頑張ります!

ZAI:昨日、大学の同期Aが相談だ、と電話してきた。Aはある会社の経営総務を担当していて、いわゆる社長付きだな、社長に「最近、売上が上がっているのに収益が下がっている。調べてくれ」と言われたそうだ。

寺野 :コンサルティングの依頼ですか?いつ訪問します?

ZAI:社長が自分の会社に外の会社が入って調べるのを嫌がるらしい。欲しい情報を渡すから分析してくれということだ。

寺野 :胡坐椅子探偵ですね。

ZAI:安楽椅子探偵な。その後、送られてきた資料がこれだ。

部門分掌
総務物品全般を管理。
人事採用。人事制度・給与制度を策定、運用
営業企画営業方針策定、業績管理。
営業推進セールス担当が所属。
新契約事務申込~契約成立までの事務。
お客さま保全既契約の保全事務。
コールセンターお客さま問合せ窓口

寺野 :この会社、何の会社ですか?もう言いました?

ZAI:まだ言ってなかった。家庭用置き薬、薬の宅配の会社だ。富山の薬売り的な。。。

寺野 :なるほど、それでこの表の部門はどういう意味ですか?

ZAI:これがメールの文面だ。分析術の【分けて考える】だな。

図合 様
いつもお世話になっております。Aです。
さきほどお電話差し上げた件です。
この表は、私が考える収益に何らか関わっている部門になります。
疑問、確認点あれば、返信ください。

寺野 :とりあえず、この部門の人たちはそれぞれどう思っているか訊きましょうかね?ふぅ~。

ZAI:そうだな。まあ妥当な線かな。寺野くんは返信までには体調を整えてくれ。

~翌日~

ZAI:返信がきたぞ。

部門分掌回答
総務物品全般を管理。コストとして大きい「印刷、コピー代」は前年と変わりありません。
人事採用。人事制度・給与制度を策定、運用採用、昇給ともに前年と変わりありません。
営業企画営業方針策定、業績管理。売り上げは、ここ10年ずっと進展し続けている。
営業推進セールス担当が所属。契約件数が増大していて大変です。士気がかなり落ちています。
新契約事務申込~契約成立までの事務。1つ1つの単価が下がっていて件数が増大しています。
お客さま保全既契約の保全事務。ひと昔前と比べて解約が多い気がします。
コールセンターお客さま問合せ窓口担当が訪問してくれない、レスポンスが悪いという苦情が年々増えています。

ZAI:上から見ていこうか。印刷・コピー代は前年と変わらない、と。ここは、コストになるところだな。内容的には関係ないかな。

寺野 :最近、どこの会社もペーパーレス、ペーパーレスって言っているのに、この会社、そのコストがずっと変わらない、っておかしくないですか?

ZAI:二日酔いじゃない寺野くんは鋭いなあ。【比較して考える】だな。何か参考になるものはあるのかな。

寺野 :同業他社に訊いてもらったらよくないですか?商品情報みたいなものじゃないから、ハードルは低い気がします。

ZAI:じゃあ、そう進言しておこう。次の人事はどうか。人件費、コストだ。これも前年と変わりありません、だな。

寺野 :この前年と変わりありません、は「増加」が前年と変わりありませんですから、全体としては増えていません?辞める人や定年退職する人は毎年どれくらい居るのでしょうね。入社年次の高い人が増えれば昇給による人件費の増加もありますよね。

ZAI:採用数、退職者数と定年退職者数、入社年次ごとに所属人数を訊いてみよう。【変化/時系列を考える】だな。

寺野 :何とかを考えるとかってぶつぶつ何か言っていますか?

ZAI:最近学んだ、物事を分析するときの基本的な考え方の分類だ。理知的に見えるかな?

寺野 :目的はそっちですか?どうかなぁ。。。とりあえず自分のことを分析してみてくださいよ。

ZAI:厳しい反応だな。次の営業企画はどうだ。10年間進展か、大したものだ。こっちは頑張っているな。

寺野 :頑張っているな、じゃなくて。ここでの「売上」って販売した額の合計を言ってますよね。10円×5個=50円ですけど、1円×50個も50円ですよね。商品ごとに儲けも違うでしょうから10年間の売っている商品の内訳を見た方が良くないですか?

ZAI:更に【分けて考える】だな。オレもそう思っていたんだよ。訊いてみよう。

寺野 :(ジ~)

ZAI:じゃあ、次、次。営業推進。いわゆる現場だな。単価が下がって件数が増大?寺野くんが言っていた1×50の話の線が早速濃くなってきたな。

寺野 :この情報だけじゃわからないですけどね。部門の人を減らしたための人手不足かもしれないです。

ZAI:では、この部門の人数の遷移を訊いてみようか。【変化/時系列を考える】だな。

寺野 :販売方針みたいなものも訊いてみた方が良いかもしれないです。営業企画が策定しているみたいですが現場では実際どうなのか、と。

ZAI:そうだな。営業企画と営業推進では温度感が違う気がするな。両方から入手しよう。これまた【変化/時系列を考える】だな。

寺野 :企画と推進の温度感の違いなんて、どこもこんな感じかもしれないですが。

ZAI:企画は「推進は思ったように動いてくれない」。推進は推進で「企画は現場のことをわかってない」というのはお決まりといえばお決まりだな。

ZAI:次、新契約だ。単価が下がって、件数増大。はい!決まり!ほら、ほら、寺野くんの予想通り!

寺野 :なんでテンション上げ上げなんですか。確かにこの想定の線は濃くなってきましたけど、決定的ではないですね、営業企画へのヒアリングを待ちましょう。別視点ですが、この部門、件数が増大しているのにコメントに余裕を感じません?

ZAI:営業推進には若干の悲壮感があるが、新契約のコメントには無いな。件数が増えているのに負担が大きくなってないのか。もしかして人員に余裕があるのか。人員配置に何かあるかもしれないな。

寺野 :もしかするとシステム化して効率化がされているかもしれません。しかしこの会社、ペーパーレスも進んで無さそうですし、システム感無いですよね。

ZAI:文面だけではわからないな。新契約は、人数の遷移とシステム化状況だ。これも【変化/時系列を考える】だな。次は、お客さま保全だ。解約が増えている、と。

寺野 :販売件数が増えれば解約も増えるでしょうね。感覚ではなくて数字でほしいですね。

ZAI:確かに解約割合を見たいな。言っておこう。最後、コールセンター。訪問してくれない、レスポンスが悪い、と。訪問、レスポンスの良さって「富山の薬売り」業の真骨頂じゃないのかな。もしかすると課題が大きいかもしれない。返信がきたら、分析を再開しよう。

部門回答確認事項
総務コストとして大きい「印刷、コピー代」は前年と変わりありません。コストを同業他社と比較
人事採用、昇給ともに前年と変わりありません。各年の採用数、退職者数と定年退職者数、入社年次ごとの所属人数
営業企画売り上げは、ここ10年ずっと進展し続けている。過去10年の販売商品の内訳。会社の販売方針
営業推進契約件数が増大していて大変です。士気がかなり落ちています。人員の増減の遷移。
現場レベルの販売方針。
新契約事務1つ1つの単価が下がっていて件数が増大しています。人員の増減の遷移。
システム化(効率化)状況。
お客さま保全ひと昔前と比べて解約が多い気がします。保有契約数と解約数。
コールセンター担当が訪問してくれない、レスポンスが悪いという苦情が年々増えています。-(他、分析待ち。)

次回に続く。