「生命保険に関する全国実態調査」から見える生保動向および考察

・生命保険に関する全国実態調査とは

生命保険文化センターが一般家庭における生命保険の加入実態および生命保険・生活保障に対する考え方を把握することを目的として、 1965年以降3年ごとに実施している歴史のある調査です。 カスタマー目線での生保業界動向等知りえる貴重なものではあるが、生命保険文化センターの公表は定量的な事実ベースの記載ということもあり、 調査事項、結果について一歩踏み込み、考察してみたいと思います。

出典元: https://www.jili.or.jp/research/report/zenkokujittai.html

・世帯あたりの払込保険料、保障額は年々減少

年間払込保険料については、減少傾向となっている。

生命保険協会「生命保険の動向(2021年度版)」のP18、図表35のとおり、 https://www.seiho.or.jp/data/statistics/trend/pdf/all_2021.pdf で公表されている生命保険会社全体の収入保険料は、年々減少していることも踏まえても、当該調査結果のとおりと認識します。

世帯年収(平均)が増加している中で生命保険への世帯年間払込保険料が減少している要因としては、 税制に優遇された、iDECO、NISA等への投資の増加に伴い、生命保険(特に保障系)への配分が減少した等推察されるが、 一番大きな要因は、これまでの主力であった高額の保険料となる終身系の保険が低金利下にて魅力を失い、売れなくなったことが大きいのではと感じます。

参考:上記生命保険の動向(2021年度版)のP4、図表2 個人保険の種類別新契約件数の推移 参照
終身保険 2016年度 351万件 → 2020年度 143万件
なお、定期保険の減少も大きいため、顧客ニーズは、医療系の保障に移行していることは間違いないと思われます。

普通死亡保険金が減少傾向となるのは、上記の要因から、当然の結果と言えます。

・保険種類は、死亡保障から第3分野および個人年金へ

終身、定期系の減少は、前述のとおりですが、第3分野系の商品はいずれも増加傾向となっています。 昨今のコロナ禍も一要因だが、繰り返しになりますが、顧客ニーズとしては第1分野の保険金を抑え第3分野商品へ移行していると考えます。

介護保険・就業不能保障保険については、「少子高齢化による介護負担問題」や「高齢化(人生100年)に伴い就業不能になった場合の収入減に対する不安」から 今後も顧客ニーズは高いでしょう。

なお、認知症保険、健康増進型保険については、2018年以前のデータがないが、超高齢化・健康志向の高まりから今後も増加していくと思われます。

・伝統的営業職員チャネルが結構頑張っている!

インターネット中心にダイレクト化は進むとここ数年言われているが、結構頭打ちに。「やっぱり保険は難しい」に尽きるのでは?と感じます。 私も長い間、生命保険に間接的に関わっており、生命保険の原理や商品内容、熟知しているつもりですが、自分のことになると結構悩んじゃうんですよね。

生命保険ってやっぱり、個人や家庭の事情等踏まえ、基本的にはオーダーメイドなんだと思います。だからこそコンサル、アドバイスが欲しいんですよね。 先日も身近な人からこんな話伺いました。

・資産数億円の知人から医療保険の相談がありました。進められたんだけどどう?
 →数億円の資産があったら、万が一のReturnが数百万円程度は誤差やろ!医療保険いらん、相続税対策しておきなさい!

・リストラされた。お金ない。子供の学費もしんどい。保険どうしたら良い?(資産価値の高い商品をよく提案する某社の終身単体等、結構高価な保険に加入)
 →家計のリストラしなさい。もう保険いらんやろ。優先順位考えろ。どうしてもというなら、10年ぐらいの掛け捨てにしておきなさい!

皆さん、どう思いますか。

なお、代理店チャネルは街中のショップ等も結構増えているので、躍進してそうな気がしますが、 平成26年5月23日の保険業法改正により、保険代理店は雇用関係のない委託型募集人に販売行為を委託できなくなったことが大きなマイナス要素かと。

注)これまでは、代理店が、業務委託等、雇用関係に無い募集人による生保募集を黙認してきたが、
これを禁止し、募集人を直接雇用し、適正な募集に努めることを義務付けされた。
よって、個人経営、フリーランスや副業的な募集人は淘汰され、吸収合併、廃業等、大きなインパクトを与えた。

また、営業職員チャネルの頑張りは、コロナ禍(今回の報告数字への影響はタイミング的に微妙)を起因とした ノルマ(雇用条件)の緩和、固定給の拡大により、退職率が大幅に減少し、営業職員数が増えていることがポイントだとも思えます。 この件は、Withコロナの業界動向として、今年、来年の数字をよく見ていく必要ありますね。

注)生命保険の営業職員のターンオーバー 出典: https://toyokeizai.net/articles/-/421445

ターンオーバーは、大量に採用した営業職員が、①新規契約の獲得などのノルマを達成できず、②その結果として給与が下がり、③揚げ句の果てに離職を余儀なくされ(または、雇用契約が打ち切りとなる)、さらに、④営業職員を大量採用するという悪循環の下に繰り返されてきた。
営業職員の在籍率を見ると、この仕事を続けていくことがいかに難しいことなのかがよくわかる。会社によって異なるが、2年目(入社後25カ月目)の在籍率はおおむね50~70%台で、3年目(入社後37カ月目)の在籍率は30~50%台、6年目(61カ月目)になると20%前後まで下がる。
つまり、5年以内に実に10人のうち8人が辞めていく計算になる。

最後に余談になりますが、

ライフネット生命 ネット、ダイレクト型生保の代表格

保有件数 約50万件弱
保有年換算保険料 約200億円強
ライフネット社hpより、2021年度決算数字抜粋

メディケア生命 大手生保子会社専業系

保有件数 約120万件強
保有年換算保険料 約680億円弱
メディケア生命hpより、2021年度3Q決算数字抜粋

結局のところ、生命保険は、ネット等による自発申込ではなく、売る側の力、メディケア生命でいえば、親会社の住友生命のホールセラー力によるものではないかと 推察します。今後InsurTechの発展により、生命保険の販売チャネル等、大きく変わるのでしょうか。 しばらく動向はウォッチしていきたいと思います。

皆さま、これらの考察、いかがでしたでしょうか。 あくまで、公表された数字からの類推です。私見たっぷりなんでご容赦下さい。ご意見等はお待ちしております。