初めての方にも使いこなせるようになるペルソナマーケティング

Insurtechラボでもビジネス検討の際にはペルソナを用いたアプローチを実施しています。ここではペルソナについての目的や具体的な作り方についてご紹介します。

なお、Insurtechラボではペルソナを無料で簡単に作成できるツール「ぺるそな君」を作ってますので、ぜひご利用ください。

ぺるそな君


ペルソナとは?


ペルソナとは「仮面」や「人格」といった意味の用語です。ペルソナマーケティングとは「架空の顧客像(=ペルソナ)」を設定し、そのペルソナに刺さる商品開発、プロモーション戦略をとる「顧客理解」を考え方の中心とした手法です。

好みや行動パターンなどさまざまな要素を加味し、実在の人物であるかのような「具体的な消費者像」を設定することで、結果として、多くの消費者に一貫したメッセージや価値を伝える製品・サービスの提供につながるのです。

自分たちの企業の都合ではなく、顧客視点に立ったマーケティングを可能にするのがペルソナの特徴といわれています。

よく混同される定義として「ターゲット」がありますが、ターゲットは年齢や性別などのデモグラフィック属性等、セグメントに対してターゲッティングしたものに過ぎません。これに対して、ペルソナはより詳細な「人物像」を設定しており、名前や勤務先、職種、家族構成、使用アプリなどを定義します。

ペルソナが必要になってきた理由として、ライフスタイルの多様化があげられます。顧客ニーズが多様化した中では、マスマーケティング的な「X世代(50代男性)は保守的に買い物をする」などの画一的な顧客像(ターゲット)では、対応が難しくなっています。正しくペルソナを設定することでインサイト(ユーザーの中で、まだ言語化(顕在化)していない欲求/価値観)を引き出すことができます。


表:ターゲットとペルソナの違い


ペルソナ作成のメリット


ペルソナ作成することで下記4点のメリットがあります。


1.ユーザー主義を貫ける

 各企業がユーザー主義、顧客主義を掲げている中、顧客インサイトにディープダイブする深さがポイントとなっています。最大公約数的なセグメントのニーズはどうしてもぼやけてしまいます。一人に絞り込むことでよりクリアなニーズが見えてくるのです。

クライアントや制作者の好みや都合ではなく、ユーザーの気持ちになり、議論や意思決定を進めて行くことで、実際のユーザーにも刺さりやすい商品・サービス開発が行えます。

カスタマージャーニーの検討など様々な場面で、「ペルソナの田中さんならどうするだろう?」といったように、よりユーザーの視点に立って考えることができるようになるでしょう。


2.ユーザーの感動を引き出すことができる

 ペルソナを通して顧客を深く理解すると、商品の使い勝手や実用性について高めることができます。あらゆる物事をペルソナ視点(ユーザー視点)で思考できるようになり、それが、いわゆる、ユーザーへの「Wow体験」に繋がるのです。ユーザーを感動させるレベルまでサービスの質を向上させるためには、普通の顧客理解では足りず、深い顧客理解(=インサイトの理解)が不可欠となります。もしペルソナを使わなければ、インサイトの理解は、ごく一部のセンスのある人しかできませんが、ペルソナを用いることで、インサイトの理解/共有を行いやすくなります。


3.チーム開発の中でイメージを共有できる

 関係者の間でターゲットの人物像の認識がズレている場合、意見の食い違いから、無駄な作業が発生したりして、スケジュールの遅れやプロダクトの品質低下などのトラブルが起こりやすくなります。リアリティのある顧客像を設定することで、価値観の違うメンバー進めるにあたっても認識のずれを無くし、チームメンバー間で効率よく業務を進行することができるようになります。施策ごとに都度ユーザー行動について議論をおこなう工数や認識の齟齬による問題が発生しづらくなるのです。


4.時間、コストの削減ができる

 対象内のユーザーやアイディアに集中してクオリティを高めることができるので、意思決定を早く行えたり、施策の成果が上がりやすくなり、(結果的に)プロジェクトの予算を削減することができます。また、ターゲット層の興味・関心を設定できるので、訴求したいユーザーを効率的に絞ることができ、広告費を削減できる可能性があります。


ペルソナ作成のデメリット


ペルソナ作成のデメリットとして下記3点があります。


1.作成自体に時間とコストがかかる

 今後のマーケティング、開発まで含めるとコストメリットは大きいですが、ペルソナ作りそのものには必要な情報収集や分析、取りまとめにそれなりの時間とコストがかかります。


2.大胆な発想を妨げてしまう可能性がある

 ペルソナを意識するあまり、0→1で発送するような大胆な発想を妨げてしまう危険性もあります。


3.間違ったペルソナ設定を行うと、失敗する

 やりがちな失敗として、ペルソナを自分達にとって都合のいい理想のユーザー像にしてしまうことがあります。ペルソナは、あくまでも企業の理想ではなく、顧客の現実をベースに考えるという点を忘れないでください。作り手の妄想など、「都合の良い解釈」によって、ペルソナを作ってしまうと意味がないものになります。


ペルソナの具体内容


ペルソナの内容は主に、デモグラフィックとサイコグラフィックデータからできています。「デモグラフィック」とは年齢・居住地・職業・家族構成などの定量的な属性情報、「サイコグラフィック」は性格・ライフスタイル・趣味などの心理的な特性のことです。

デモグラフィックはある程度のデータがあれば設定することが可能ですが、そこからはサイコグラフィックは見えてこないため、サイコグラフィックを設定するためにはより詳細なアンケートやインタビューなどを実施する必要があります。また、ユーザーの接点として、どんなメディアがあるか?メディアごとにどういった形でユーザーと関わるかを整理しましょう。ユーザーがいつ、どれくらいの時間、どういった目的で、どのメディアに接触しているかを順に書き出し、一日の流れに沿ってまとめます。

図:ペルソナ君で作成したペルソナイメージ


ペルソナの作成方法


STEP1.ターゲット設定

これからビジネスを展開してく市場を明確にしましょう。自社でどういったユーザーを狙っていきたいのか、そしてその市場の規模や市場動向など、収益性が見込めそうか?あらかじめ把握しておくことが重要です。たとえば20代男性と50代女性では想定するペルソナも全く異なるので、どういったターゲットを狙うかSTPマーケティングの考え方も使いながら設定します。


STEP2.情報収集

ペルソナ作りにあたり、重要なのは、どんなに小さくて手作り感あふれるデータでも良いので、「実在するユーザーのデータ」を集めることです。ただし、情報収集のコストがかかりすぎてしまう恐れもあるので、有望と思える層にスコープを絞るようにします。具体的には下記方法があります。

2-1.インタビュー

ターゲット層の顧客の生の声を聞くことで、定量調査では把握しきれない深層心理や意識、行動の意味を洞察することが可能です。インタビューを行う目的は以下の通り顧客体験プロセスに関する詳細な情報収集となります。

 ・顧客接点のペイン・ゲインポイントを明らかにする

 ・ペインポイントの改善点の洗い出す

2-2.フォーカスグループインタビュー(FGI)

共通の属性を持つ対象者グループに対して調査テーマに関する質問を行い、自由に発言してもらうインタビュー。FGIを行う目的は以下の通り

 ・意思決定の方法と理由を探る

 ・グループ間のコラボレーションとアイデアの自由な発想を可能にする

 ・ペインポイントや潜在的な機会について、より効果的な打ち手を検証する

2-3.アンケート調査

アンケートを実施することで、大人数から定量的・定性的なフィードバックを得ることができる。アンケートを行う目的は以下の通り

 ・定量化しやすいインサイトを収集

  ・多くの顧客から効率的に情報収集が出来る

2-4.定量調査

収集した分析データから顧客の定量的な情報を見つけ出すもの。定量調査の結果の利用方法は以下の通り

 ・ペインポイントの影響を測定する際の根拠の確認

 ・顧客の置かれた環境の把握

 ・定性的な洞察を定量的な情報で裏付けをする



STEP3.ペルソナに落とし込む=ストーリー化

ペルソナの詳細を描くうえでは「ストーリー」に目を向ける必要がります。顔写真等を用意して、イメージをさらに明確にしていきます。どんな生い立ちか、どんな背景があるのか、その人はどんなシチュエーションにいるのか、人間関係やエピソードを考えリアルと思える物語を作詞し、現在の様子を映像化して考えると、どんなアプローチが効果的なのかより具体的なイメージにつながります。平均性ではなく、代表性あることに注意して代表的なエピソードを深掘りしてきます。


STEP4.ペルソナの検証

ペルソナの検証を行います。ここでは元データを確認しペルソナがデータから乖離していないか、ペルソナを裏付ける元データが揃っているか、対象セグメントと同一性があるかといった検証を行います。

ユーザーをよく知る人に、作成したペルソナがユーザーの共通項をとらえた適切な人物像となっているか、評価してもらう方法が一番よいです。ペルソナが作り手の独りよがりなものになっていないか、客観的な視点でチェックしていきます。


STEP5.ペルソナの運用・見直し

ペルソナは一度設定して終わるのではなく、何度も見直して再考していきましょう。ありがちな失敗として、一度作成したペルソナをそのまま使い続けてしまうケースが挙げられます。

ユーザーの消費活動も日々変わってきます。「現在設定しているペルソナと、実際の消費者はかけ離れていないか」と再考を続け、常にブラッシュアップしていくことが成果を出すうえでは大切なポイントとなります。年単位で長期利用するペルソナの場合であれば、半年に1回程度はアップデートする必要があります。


ペルソナ作成での注意点


ペルソナを作成するうえではいくつかの注意点があります。誤った方法で活用すると効果が軽減されてしまうため、下記の点に注意してすすめましょう。

思い込みや先入観のみで決定しない

ペルソナを設定する際、このようなユーザーに使ってほしいと、ペルソナに対して、作成者の理想や思い込みが強く反映されてしまうと最適なペルソナから遠い存在になってしまうことがあります。

仮説として、ユーザー像を思案するのは良いですが、ペルソナを決定するうえでは、しっかり現状の利用ユーザーとのズレが生じていないかデータとあわせて判断をおこなうようにしましょう。ペルソナを設定した後も、実際に営業担当へヒアリングを行ったり、実際のユーザーへのインタビューを実施したり、作ったペルソナを第3者にレビューしてもらいながら、ユーザーの生の声に忠実に作成し、修正を続けていくことが重要です。

ペルソナは絞って考える

ペルソナを考えていると、この要素も入れたいと複数の要素を入れてしまいたくなりますが、特定の人物像として情報の相反が起きない程度にしましょう。もし複数の要素を入れたい場合は、ペルソナを分けて、別のペルソナとして設定するとよいでしょう。また、不要な情報を付加しすぎてしまうと、却ってユーザー像がぼやけてしまうケースがあります。たとえば保険業務の顧客を表すペルソナに、「好きな食べ物」の情報は必要ありません。なるべく一人のユーザーについて深く掘り下げ、現実にイメージできるようなリアルな人物像を描いていくことが大切です。


新規顧客の目線にたつ

自社商材をよく利用している既存顧客にペルソナを寄せてしまうと、潜在的にニーズを持っている新規顧客の人物像とズレてしまう可能性があります。既存顧客の囲い込みも重要ですが、より販路を広げるためには新規顧客の獲得は欠かせないものなので、新規顧客の目線も持ちながらペルソナを設定しましょう。


まとめ


いかがだったでしょうか。消費者の嗜好や解決したい課題が多様化した現在、従来のマスマーケティングやセグメントデータに基づくマーケティングだけでは、消費者の心に突き刺さるような製品・サービスは生まれにくくなっています。ペルソナマーケティングを成功させることがサービス・商品開発の鍵であるといっても過言でないのです。

この記事を参考にぜひペルソナマーケティングを成功させてください。ペルソナのイメージが湧きづらい場合は、下記ペルソナ君を使ってもらえればと思います。

ぺるそな君