課題仮設ドリブンにおけるリサーチの視点

2022年4月からInsurTechLab.の一員としてチーム「仮説検証/R&D」に参画するなかで、リサーチャーとしての役割が主な
職務の一つとしてあります。昨年度まで「業界動向リサーチ」業務に携わっていたこともあり、当初はその業務の延長線にある
と捉えていました。時間の経過とともに「業務の目的が変わればリサーチの視点も自ずと変わってくる」と考えが変わってきま
したが、日常業務に追われることを言い訳に、その視点の整理ができていないのが実情でした。
今回、今後の業務遂行を睨み、現在チームで取り組んでいる「課題仮設ドリブン」(下記イメージ図参照)をベースにして「リ
サーチの視点」を整理しようとの思いに至り、当稿を作成することとした次第です。

課題仮設ドリブンのスタート段階の課題は「仮課題」ともいえ、課題がまだ明確になっておらず、それを明確にしていくための
ステップとしてリサーチを行い、課題を深堀し明確にしていきます。(課題の再設定)
*リサーチとマーケティングは密接に絡みます。よって、当整理における「リサーチ」には、マーケティング要素も含めるも
 のとします。

今回は、仮説キャンバス作成に際してのリサーチの視点を整理してみました。

1.仮説キャンバスに沿ったリサーチの視点

仮説キャンバス(表1)の各エリアに沿ってどのようにリサーチするのが良いか、各エリアを整理する与件(インプット)となる
情報リサーチの視点を探っていきます。
仮設キャンバスに沿ってリサーチの視点を整理するのは、次の3つの理由からです。
 ①立てる仮説の全体の整合性をみるのに、仮説キャンバスは効果的である。
 ②仮説を立てるために必要な情報が仮説キャンバスには反映されており、リサーチとは表裏の関係にある。
 ③仮説キャンバスの各エリア設定のなかで、設定できない、深堀できないなどのケースが発生した場合はリサーチ不足(再リ
  サーチが必要)であることがわかる。
なお、今回は課題を明確にするのが目的であり、BtoCのC(キャンバスの右側)を整理していきます。

=参考資料=
・市谷聡啓氏のコラム
プロダクト作りの在り方を探るコラム第5回| 仮説キャンバスでプロダクトの仮説を立てよう 市谷聡啓 | 国内唯一のCTO/VPoE育成・転職支援サービス「OCTOPASS(オクトパス)」
・市谷聡啓氏のインタビュー記事
インタビュー:アジャイル開発はWhyから始める-市谷聡啓さん | オブジェクトの広場 (ogis-ri.co.jp)

表1【仮説キャンバス

仮説キャンバスの各エリアに沿ってリサーチの視点を整理した結果は表2のとおりです。
ここでは、各エリアのキャンバス作成の視点を洗い出し、その視点に沿ってリサーチの視点を整理しました。
なお、仮説キャンバスの各エリア設定においては、リサーチ結果を踏まえての推論や仮説キャンバスの各エリア内容を
踏まえて設定する事項もあり、各エリアがすべてリサーチ結果が直接的なベースとはならない点を付記しておきます。

表2【仮説キャンバスのエリア毎のリサーチの視点】

2.リサーチの手法

一般的に、リサーチは仮説がないまま調査しても的が絞れず求める結果が得られないことが多いことから、「課題から仮説を立
てる」ことが重要といわれています。
そのリサーチの手法は、例えば「パネル調査」「アドホック調査」そして「デスクリサーチ」の3つに分類できるとされ、その目
的に応じて使い分けて実施するが妥当ですが、私達は限られた資源のなかで実施する必要があります。よって現実的なリサーチ
手法は「デスクリサーチ」が主体、即ち、文献やインターネット検索実施の中で、適切な手法に準じて取得された情報を入手し、
それをリサーチ結果として活用するのが、現段階では妥当といえます。

なお、アドホック調査の定性調査に分類される有識者への「インタビュー」は、限られた資源の中で仮説の方向性や妥当性の裏
付けを取る一つの手段として活用できるものといえます。このことは、チーム活動における「生命保険における顧客体験」をテ
ーマとした検討の中で、コロナ禍を踏まえた状況を把握するために、営業職員チャネルとショップチャネルの実態を、実際に当
該チャネルに携わる人にインタビューした際に感じたものです。チームメンバーのネットワークを生かして、今後も有効に活用
していきたいと思います。

≪参考≫3つのリサーチ手法の概略(下記参考資料から抜粋)
 =参考資料=
 マーケティングリサーチの代表的な手法をわかりやすく解説! | マーケティングリサーチの電通マクロミルインサイト (dm-insight.jp)

 〇パネル調査
  対象者を固定し同じデータを継続的に収集することで、調査結果を時系列で比較する調査。顧客満足度、認知度、購買行動な
  どの変化を確認することができる。
 〇アドホック調査
  パネル調査とは対象的に1回で完結する調査方法。調査の目的に応じて設計を自由に行うことができるため、都度発生する課
  題解決に活用でき、定量調査と定性調査に分類される。
 〇デスクリサーチ
  すでに実施された調査結果や統計情報などを文献やインターネットを使い収集する調査方法。 文献やインターネットから情
  報を得るため、コストをかけずに市場環境や業界トレンドなどを把握できる。

3.仮説キャンバスの作成

 表2【仮説キャンバスのエリア毎のリサーチの視点】に基づいて、実際に仮説キャンバスを作成してみました。

 a.仮説キャンバス作成の準備

 テーマは「エンベデッドインシュアランスの将来のチャンスを考える」のなかから、以下の課題(仮課題)を設定。
 ・「ライフイベントや給付金請求など、保険会社とのタッチポイントが限定されている現状を打破し、継続的に接点を設ける
  ようにしたい」との観点に着目。
 ・セカンドライフに入った直後の年齢層が対象。「セカンドライフを豊かに過ごしたい」との願望が根底にあるが、なかなか
  実現できていない、実現する方法が不明な人達が多いのが現状ではないか。日常の接点の中で豊かなセカンドライフにつな
  がるソリューションを検討するために、BtoCのC(仮説キャンバスの右側)を整理するためのリサーチを行い、各エリア内容
  を整理しました。結果は表3のとおりです。

=参考資料=
 ※1 2022年4月15日公表の総務省統計局「人口推計」

 統計局ホームページ/人口推計/人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口‐ (stat.go.jp)

 ※2 リサーチをリサーチする、マーケターのための情報サイト「リサーチリサーチ」の
  2016年03月15日「定年退職後の夫婦の生活」意識調査(50代60代夫婦対象)

「定年退職後の夫婦の生活」意識調査(50代60代夫婦対象) | リサーチ・リサーチ|調査データ探すならリサリサ (lisalisa50.com)

 ※3 NTTファイナンス系サイト「楽クラライフノート」

 セカンドライフをどう楽しむ?老後の生きがいに迷う人への過ごし方も提案|楽クラライフノート お金と終活の情報サイト (ntt-finance.co.jp)

なお、セカンドライフの実態などに触れたたり、推論整理やBtoCのB(仮説キャンバスの左側)をイメージするため、以下の文献も参考にしました。


〇朝日新聞系サイト「なかまぁる」

 ・人生100年時代 セカンドライフはどう過ごす? アンケート結果 | なかまぁる (asahi.com)

 ・定年後は海外に?人生100年時代のセカンドライフ、リアルな声 前編 | なかまぁる (asahi.com)

 ・第2の人生はお遍路を?おひとり様のセカンドライフ、リアルな声 後編 | なかまぁる (asahi.com)

b.仮説キャンバスの作成

 表3をもとに仮説キャンバスを作成しました。結果は表4のとおりです。

表4【仮説キャンバス

4.終わりに

以上のとおり「仮説キャンバスに沿ったリサーチの視点」を整理し、その整理内容に沿って仮説キャンバスを作成してみま
したが、その際「リサーチ視点に漏れや不明確さある」「キャンバス作成においてリサーチ不足に気付く」など、何回も試
行錯誤を繰り返しました。実際に仮説キャンバスを作成してみたのは、整理した「リサーチの視点」の正当性を検証するのが
目的でしたが、今回は1回だけの作成(検証)に終わっており、まだまだ不足な事項、深堀が足りない事項があると思います。
この点はこれからの仮説キャンバス作成の機会を通じて補強していき、課題を明確に設定できるように取り組んでいきたいと
思います。