IT企業のプロダクト開発担当が、マーケティングを学んで気づいた3つの活用ポイント+1

マーケティング3つの活用ポイント+1

多くの企業が取り入れているマーケティングの技法について、学んでみました。
Insurtechラボで実施しているプロダクト開発や仮説検証においても、活用できるポイントがありましたのでご紹介します。

1.マーケティング戦略の基本プロセス

マーケティング戦略の基本形は、下記5つのプロセスを追って・繰り返し実施することが良いとされています。

戦略の検討とは、マクロ・ミクロ両面の視点で現状を捉えてニーズを予測し、ビジネスになるターゲットに対して、自社の優位性を活かして魅力的なサービス・商品を提供する方法を具体的に立案していくことです。

以下のプロセスを踏むことで、複数の視点(粒度)で構造化しながら検討することが可能です。
ただし、プロセスが進むにつれ詳細になっていきますので、検討内容の関係性(整合性)を保つことがポイントになります。

マーケティング戦略の基本プロセス

2.学んで気づいた3つの活用ポイント

IT企業がプロダクト開発を行う際に、マーケティング技法をどのように活用できるか?
私が学んで気づいた3つのポイントをご紹介します。

いずれも、企業が置かれれる環境や状況によって、共感度は異なってくるかもしれません。
ただし、Insurtechを志向する企業においては、同様の課題があるのではないかと思っています。
僅かでも参考になれば幸いです。

(1)既存事業の課題を把握する・優先順位をつけて対応する

皆さんは、既存事業の課題を把握し、対応の優先順位をロジカルに説明できますか?

私たちの組織では、なぜその課題を優先的に対処するのか、説明できないことがあります・・・。
課題そのものへの対処はプロフェッショナルなものの、
関係者により課題の優先度に認識相違があったり、決定プロセスが不明瞭だったり、ターゲット個別の対策が乱立していたり、
といった現状です。

マーケティングの基本を活用することで、整合性の取れた対策を講じていくことが可能であると考えています。

  • 現状の把握
    まず、現状を可視化できていないなら、現状のマーケティング戦略を整理してみると良いでしょう。
    最低限として、セグメンテーション→ターゲティング→ポジショニング→マーケティングミックス だけでも可視化には効果があるかもしれません。
  • Gap分析〜施策の検討
    次に、内部外部の環境変化について考え、現在の戦略とのGapを確認するのが良いでしょう。
    新たな課題または、表出化しているものより深刻な課題が見つかるかもしれません。
    外部/内部環境分析→市場機会の特定→Gap分析→セグメンテーション〜マーケティングミックスの順で検討を行うことで、
    整合性の取れた課題への対処ができると思われます。

(2)目標となる成果指標を定める

皆さんの企業では、事業の成果について、計測する手段を持っていますか?

私たちの組織では、活動予算と新規獲得顧客の目標を定めて実行・評価することが多いです。(プロダクトによって異なりますが)
ただし、成果に対する評価と、その後の対策の整合性がとらていない印象があります。

その原因は何か・・・?
ビジネス特性を加味した目標になっていない、目標が具体化(分解)されていないことにより、正しく計測・分析・対策ができない状態に陥っているからではないかと考えています。

成果指標は、プロダクトが提供する価値やビジネスモデルにより決定されるのが良いとされています。
設定した成果指標は要素分解し、それぞれが計測できる状態とすることで、課題を発見しやすくなります。
マーケティング手法を活用し、戦略と一貫性のある成果指標を定めることが有用だと考えられます。

例えばSaaSモデルなど、サービスを継続的に提供し長期利用または定期的に購入(更新)いただくことでビジネスが成立する場合、
「UnitEconomics(顧客1人当たりの採算性)」を成果指標に設定することが多いようです。

下記は自社ビジネスを参考に構成要素を分解してみました。
要素を計測し、LTV < CACとなる場合の原因を調査すると、マーケティング施策に立ち戻って対策を講じることができそうです。

(例)UnitEconomicsの構成要素分解

(3)価格設定を行う ※しかし、容易な決定プロセスは存在しない!

皆さんは、担当する事業の価格設定をロジカルに説明することが可能ですか?(一貫したロジックを持っていますか?)

私たちの組織では、既存事業に関しては社内外に説明可能な一貫した価格設定があります。
しかし、近年における競合の環境変化により、価格設定を見直しの必要性が議論されており、メンバーは頭を悩ませています。

一般的に、価格設定時に考慮すべきポイントは、下記の3点であると言われています。
やはり価格設定においても、ポジショニングやマーケティングミックスとの整合性を確保することが重要だと思えます。

  • 提案価値
    この商品を購入する顧客に与える価値と価格の関係。
    価値を構成する要素は、BtoBとBtoCでは大きく異なると考えられますが、いずれも提案価値に見合った価格を求められます。
    (前者は経済合理性、後者は心情面におけるゲインなどの定性的な効果も加わる)
    どのようなニーズを持った顧客に、何を自社の優位性として商品を提供するかについて、ターゲティング、ポジショニングの戦略と密接に関連しそうです。
  • 商品開発(製造)コスト
    この商品を製造するために必要となるコストと価格の関係。
    自社の経済合理性を成立させるためには、コストを下回る価格の設定は難しいでしょう。
  • 競合の価格
    競合の価格設定と自社の価格の関係。
    自社が後発であるならば、競合と同等または少し高い価格を設定する場合が多いようです。
    低い価格を設定した場合は、競合との間で意図しない価格競争に陥るリスクがあります。
    同一ターゲットに対する、競合とのポジションを正しく理解する必要があると考えられます。
価格設定の主要な考慮ポイント

しかし、構造的な知識を得たとしても、価格設定は簡単ではありません・・・。
上記の要素と整合性を取りつつ、数多くのオプションを加味して価格設定を検討する必要があります。
(支払期間、支払方法、固定・変動などの価格設定方法、変動させる場合の変数設定、ディスカウント条件etc)

また、設定した価格は変更することが現実的には難しいケースも多く、事業に関する将来予測や責任を求められます。

稲盛和夫氏 の”経営12ヶ条”から引用し、私たちの事業に関しても引き続き検討を行いたいと思います・・・。

第6条 値決めは経営
値決めはトップの仕事。お客様も喜び、自分も儲かるポイントは一点である

稲盛和夫 OFFICIAL SITE
https://www.kyocera.co.jp/inamori/management/twelve/twelve06.html

3.(おまけ)マーケティング戦略を練りに練っても、良いプロダクトは生まれない?

私はここまでマーケティングを学んできて、1つの疑問を持ちました。
新たなプロダクト(提供価値)を作るために、マーケティングの手法は有用なのだろうか?ということです。

マーケティングが有用な例を考えるために、商品の差が生まれにくいミネラルウォーターを販売することをイメージしてみます。
周囲の環境は下記のような前提であったとします。

  • 既にペットボトル飲料が普及しており、日常的に消費することが顧客に定着している
  • ミネラルウォーターは、健康志向から積極的に求める顧客が存在する
  • 顧客は内容物に関する差が分からない(どのミネラルウォーターも「美味しい水」である)


若干極端な例ですが、このような前提であれば、マーケティング施策を実施することで、市場に商品の魅力を伝え、顧客を定着化することができると考えられます。

  • 商品
    ・ブランディング(キャッチコピー、パッケージデザイン)で差別化を図る
    ・商品の付加価値(捨てやすいペットボトル形状)で、利便性を訴求する
  • 流通
    ・トレーニングジムやサウナ、主要なランニング・サイクリングコースの自動販売機、売店等への流通を強化し、
     健康志向の高い顧客に届くようにする
    ・チャネルの階層を簡略化し、コスト圧縮を図る
  • 販売促進
    ・店舗でのキャンペーンや、陳列方法に関する施策を講じて、顧客の興味を引き出す


一方で、商品の魅力が競合他社より大きく劣後している場合(自社ミネラルウォーターの品質が低い・価格が高いなど)、いくらマーケティング戦略を練っても、顧客に広く受けれられたり、競合に勝ったりすることはできないと考えられます。

このことからすると、マーケティングは、
「顧客ニーズに対する魅力的な商品が自社にあること」を前提とし、
「顧客に魅力が届かない」、「売れても儲からない」、「競合に勝てない」などの課題と戦うための手法

なのではないでしょうか?


Insurtech企業のプロダクト開発に置き換えて考えると、どうでしょうか?
私たちに求められることは、表出化したニーズに対応するという現状から、顧客が気づいていない課題・ニーズに向き合っていくことに徐々に変わってきていると感じます。

  • 課題が本当にあるか分からない(顧客自身も課題に気づいていない)
  • プロダクトが課題を解決できるか分からない
  • 顧客が定着するか分からない

現在の環境下でマーケティング戦略をいくら練っても、ミネラルウォーターの事例のような成功を得ることはできなさそうです。

私たちが取り組むべき重要なポイントは、

顧客と向き合って課題を発見し、価値のあるプロダクトを届けられる状態を作るということ
になるでしょう。

そのためには、リーンスタートアップの手法を活用し、仮説構築をして検証し、再構築するサイクルを短期間で回すことにチャレンジしてみたいと思います。

もちろん、マーケティング手法については有用であり、既存事業の課題解決及び、新規事業のグロース局面で活用することができると考えます!
プロダクト開発で活用できるリーンスタートアップの手法ついては、以下の記事でご紹介しております。
興味のある方は、どうぞご覧ください!

リーンスタートアップって何?

4.まとめ

いかがだったでしょうか?
マーケティングに関して「業務に当てはめると活用イメージが湧かない」といった悩みが、少しでも解消すれば幸いです。
私たちInsurtechラボの活動において、実践した結果から学べたことを引き続き情報発信していきます。

ご覧いただき、ありがとうございました。