リサーチャー&マーケターとしての在り方

Insurtech研究所の「仮説検証&業界リサーチチーム」に所属し早半年。主に一般消費者動向・業界動向を中心にリサーチを行ってきました。リサーチ&マーケターとしての位置づけですが、メインとしてはリサーチャーとしてのタスクとなっているため以下マーケットリサーチャーとしての振り返りと共に、今後の在り方を考えてみました。

1. リサーチャー&マーケターとは(Insurtech研究所の仮説検証&業界リサーチチームでの定義)

2. リサーチャーの役割

・リサーチにあたって、正確な情報でないと次工程の課題設定を誤ってしまう可能性があります。
従って、省庁、業界ニュースリリースは別として「気になるワードからの検索」については
真偽を見極めるため、1つの検索結果だけでなく多方面から見ていく必要があります。

3. リサーチ例

①一般消費者理解に関するリサーチ②業界動向理解についてのリサーチ例として、以下の様なリサーチを行ってみました。詳細についてはInsurtech研究所のHPに投稿しているので、興味のある方はご覧になっていただければ幸いです。

リンク先:https://www.insurtechlab.net/

①一般消費者理解
    ・生命保険文化センターのHPより「生保全国実態調査」のまとめ
     ・死亡保障から第3分野へシフト
     ・払込保険料は減少傾向
     ・加入意向のあるチャネルはインターネットだが、実際加入となると対面
      (営業職員、代理店)
    ⇒ インターネットを中心としたダイレクト化といわれているが、営業職員・代理店への
      タッチポイントをいかに増やすかが課題

    ・厚労省のHPより公的年金シミュレーションを作成したとの記事から
     公的年金シミュレーションを使ってみた
     保険簿を使ってみた。   の使ってみたシリーズ。
    ⇒ 加入する保険の種類・金額について、将来の年金はいくらもらえるのか
      今、何の保険に入っていたんだっけ?の課題解決の糸口として分析してみた。
      保険加入の動機付けにならないか?

    ・顧客の生命保険に対するイメージはどうなのか?嫌いな人ってなぜなのかを
     インターネットの口コミ、保険会社の顧客の声等から集めてみてはどうかの問題提起から
     保険嫌いな人・好きな人の理由・傾向について調べてみた
     結果、嫌いな人の傾向として保険会社・営業職員・生理的の3つに分類されることが
     分かった。
    ⇒ 上記分類3つのそれぞれについて背景・生保の取組・提言をまとめてみた。
      嫌いな人を保険に加入してもよいかなと思ってもらえるかの仮説。

②業界動向理解
    ・金融庁の「顧客本位の業務運営」で提示された7原則について、代表的な生保
     (内国生保、損保子会社、外資系生保、ネット系生保、カタカナ生保生保)
     がどのような取組を行ったか。特に顧客の声に対してどう取り組んだかを調査
    ⇒ 結果、課題設定までは至らなかったが知見集積という観点ではよかった。

4.リサーチャーに求められるスキル

 参考 :https://media.mar-cari.jp/article/detail/410
一般的に言われているリサーチャーとしてのスキルについてここで取り上げる事としました。以下4点がスキルとしては重要とされています。

データ分析能力

リサーチに求められるのは具体的な数字だけではない。アンケートなどでAの質問にYESの回答がいくつというだけではなく、YESの回答が多いことから、顧客の傾向を分析し、課題が何なのかを提示することが重要である。
データ収集役ではなく、コンサルティングのような立ち位置であると考えて行動することがリサーチャーには求められる。ネットや企業のHP、ニュースリリースからデータを収集する場合も同じことが言える。例えば、生保で「ソニーが保険料料増基準を緩和」というニュースリリースから、なぜ緩和したのか?他社は追随しそうなのか?といった考察や追加調査も必要になってくるかもしれない。

顧客や消費者の心理をつかむ能力

BtoBの企業であれBtoCの企業であれ調査の結果の奥にある潜在的なニーズをつかむことが重要になる。BtoCの企業なら消費者心理を、BtoBの企業なら市場動向やトレンドも顧客心理と併せてつかむ必要がある。この能力が一番重要であり、顕在ニーズはもちろん潜在的ニーズをいかに把握できるかがリサーチャーの腕の見せ所。その為には収集したデータだけでは不足の場合が多く、ネットなどでよくみられる「口コミサイト」「業界紙などのランキング」とあわせて分析することが重要。

スピードと丁寧さ

リサーチ結果は市場動向やトレンドなどによって絶えず変化するので、開始から終了までは可能な限りスピーディなものが好ましい。リサーチャーにはスピードと丁寧さの両方が同じくらい求められる。また、マーケターとの連携は欠かせず、リサーチ結果からの再リサーチも必要となる。

知的好奇心・忍耐力

リサーチャーの仕事は、課題に対して仮説を検証していくという点で研究者にも似たところがある。様々な角度からの検証が必要なので、忍耐強さが求められる。それでもモチベーションとして「正解を知りたい」「新しいことを知りたい」という知的好奇心があれば仕事にやりがいを持って働くことができるはず。また常にネット記事、省庁HP、業界動向記事などにアンテナを張っておく必要がある。いわゆる情報ストック(知見の集積)が大切である。

5.リサーチデータを取得する4種の方法

マーケティング活動を成功に導くためには、マーケティングリサーチは必須ですが、リサーチを実施する際は、リサーチの目的を設定することが最も重要となります。

マーケティングリサーチが必要なシーンは、多岐にわたります。例えば、

商品開発
・自社の技術で福祉に役立つサービスを開発するため、福祉の現場の困りごとを知る必要がある
・スポーツ観戦の来場者を増やしたい、ソフト面のサービスでそれを実現するためには、どのようなサービスが望まれるだろうか?

商品改良
・競合商品の容器形状は爆発的に売れている、自社の容器形状は受け入れられなくなるのか、もし受け入れられないなら、自社の工場で生産可能などんな容器形状に改良する必要があるか?

ターゲティング&コミュニケーション戦略
・主力商品の売上を倍増させたい、そのために新しく狙うターゲットは誰か?明確にする必要がある
・これまでは一部のターゲットにしかアプローチできていなかった、もっとターゲットを広げるためには、誰にどのような商品価値をどのように伝えればよいか?

価格戦略からマーケティング全体
・業界全体の価格戦略に追従し客離れを起こしてしまった。自社商品の本質価値を再確認し、顧客を呼び戻す必要がある

営業戦略
・営業から入ってくる顧客情報は自分の得意客の意見に偏る傾向にある。既存顧客を網羅した情報収集を行い、営業戦略を検討する必要がある

ブランドマネジメント
・応募が見込み通りではない。自社のブランドが認知されていないのか、それとも伝え方が間違っているのか、明らかにし、次年度に向けて対策を打つ必要がある
・自社の顧客満足度指標をモニタリングし、PDCAを回す

上記のような例は、いずれもマーケティングリサーチを実施しないと、今後の方針が立てられません。

マーケティングリサーチは、目標と現状のギャップを明らかにし、目標に向かう道筋をつくる戦略策定や実行計画・プランニングの意思決定に役立ちます。

リサーチデータの取得方法は以下4種類が考えられる。

参考:https://www.marketing-literacy.org/blog/%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%B0%E3%83%AA%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%81%E3%81%AE%E5%BD%B9%E5%89%B2%E3%81%A8%E3%81%AF/

<データ取得の種類>

データ取得の種類と選択のポイント


1.質問法 
調査を設計する担当やマーケターが、調査目的、調査対象者、回収数、実施タイミング、質問などを設計する方法です。
調査媒体として2つの方法があるがどの方法をとるか、ケースBYケース。
一つは、質問を決めてリサーチをしたい場合: インターネット、電話、郵送、同梱はがき 等
もう一つは、質問をある程度決めて詳細はゆるく(適宜)変えられるリサーチをしたい場合: グループインタビュー、デプスインタビュー 等、ディスカッションやインタビューに触発されて新しい発言から新しい質問を創造しながら進めることができるリサーチ

2.傾聴法 
生活者や顧客の自由な発言を、傾聴しデータを取得する方法です。
「傾聴法」は知るべき事を知る。一方「質問法」は知りたい事を知るという方法。
企業側から仕掛ける場合: 設定したテーマについて自由に発言してもらい新たな発見を得る、MROC(Market Research Online Community)やネットグループインタビューという手法がある。
受動的に傾聴する場合: SNSやブログ等で発信されている情報を取得する方法です。

3.観察法 
「3.観察法」は非言語コミュニケーション(ノンバーバル、non-verbal communication)を重視する情報という点が特徴。
観察法は「人」による観察か、「機械」による観察か、大きく2方向あります。
・「人」による観察: ミステリーショッパー(覆面調査)、エスノグラフィー(一定期間行動を共にし観察)等
・「機械」による観察: Webログ解析、POS、アイトラッカー等                          いずれも、当Labでは実施は困難と思われる。

4.実験法 
スプリットランテスト※は、実験法の一種。
※スプリットランテスト: A/Bテストとも呼ばれる。同様の環境下で分割(スプリット)した調査対象者に、複数の素材(広告原稿等)を露出し、どれが最も効果があるかを測定するテスト。
実験場所は、調査会場(CLT:Central Location Test)、店舗、映画館(試写会)、個人宅(HUT:Home Use Test)、折込(新聞)、WEB上、等です。乗合代理店等で複数商品を提示する際にこの方法は可能性があるかもしれない。

6.終わりに

今回は主にリサーチャーとしての振り返りと役割についてまとめてみました。
一般消費者動向や業界動向から見える課題・仮説について、更に深堀し再リサーチから新たな
課題を見出すことが重要だと思われます。
今後はさらにアンテナを広げて、情報収集・分析した結果をHPに投稿していきたいと思いますので是非ご覧ください。