生成性と創造性が生む、チーム発信の新しい形(2025.1Qアドベントカレンダーはじめました)

この記事はInsurtechラボ2025.1Qアドベントカレンダーの1日目の記事で書いています。

Insurtechラボとしては発信活動を推奨しており、この企画もその一環で実施しています。また、1Qでは下記の通り、皆でOUTPUTを実施する取り組みも行っています。

これまでもこのHPでは、OUTPUTの重要性について何度か取り上げてきました。例えば、下記の記事がその代表です。

生成AIがここ数年で大きく発展する中で、個人的に思うところがあります。今回は、生成AI時代の発信活動について思っていることをまとめてみようと思います。

創造性と生成性を活かす発信の新しいかたち

 生成AIが進む中で、発信においても、創造性(クリエイティビティ)と生成性(ジェネラティビティ)という二つの力が重要では?と考えるようになりました。


 創造性(クリエイティビティ)は、「思ったことを形に出来る」力です。これは、言い換えると、自分の中から湧き上がってくる表現のエネルギーでもあります。自身の感情等も含めた暗黙知を中心とした力だと思っています。

 一方で生成性(ジェネラティビティ)は、何らかの理に基づくもので、自然に・自動的に生み出される力だと思っています。元々ラテン語の”generatus(生む、生まれ出る)”に端を発した言葉で、元来は生き物が生まれ、成長、繁殖する過程を指します。生成AIがまさにジェネラティブに生み出す代表です。

 「生成AI」で何かを生み出すのはクリエイティブではないという意見もありますが、「どんなテーマで書くか」を決め、「生成AI」にINPUTする枠組みを考え、「出力された文章」を整え編集していく。これらは作家/編集者/校正者を合わせて実施していくとてもクリエイティブな行為だと感じています。
 生成性は、創造性を補完し、発信の楽しさを広げてくれるパートナーのような存在だと思っています。

まずは個人で、生成的・創造的な発信に挑戦する

 ワークショップで生成AIを使ってみると、最初は「これでいいのかな」と戸惑うメンバーもいました。けれどいざ文章を出力させてみると、自然に「ここはこう言い換えたい」「もっとこういう話を足したい」という声が出てきます。これはまさに、創造性と生成性が交わる瞬間でした。

 最初に生成AIを使うときは、出てきた文章が「もう完成しているように見える」かもしれません。でも、ブログとして世に出すときには必ず「やっぱり自分の声を入れたい」と感じる。生成AIが出す文章はきっかけにすぎなくて、そこから「どうすれば自分らしくなるか」を考えるプロセスこそが、発信の醍醐味だと思います。

 こうして、まずは個人として発信に挑戦することで、創造性と生成性の面白さに気づくことができます。この感覚を味わうことで、自然に「書いてみたい」「次はこんな視点でやってみたい」と思えるようになると良いなと思って、今回は実験しています。

SECIモデルと集合的知性 ― チームで知を育てるサイクル

 個人の発信が広がることで、チームでの発信/製作活動にも自然に波及していくと考えています。
 このときのヒントになるのが、SECIモデルという知識創造の理論です。SECIモデルは、知識がどうチームや組織の中で形になり、育っていくかを示す理論で、次の4つのプロセスを持ちます。

  • 共同化:経験を共有し合う
  • 表出化:暗黙知を言葉にする
  • 連結化:知識をまとめ、再編する
  • 内面化:それを自分の行動や考えとして根づかせる

 これらのプロセスは1人ではなくチームや組織で実施するものと定義されています。暗黙知を暗黙知として共有する共同化を行い、それを表出化、連結化していく共に、上記に記載した、生成的・創造的な発信がポイントになると考えています。

 生成AIは何らかのINPUTを入れると、一定の理に基づいてOUTPUTが返ってきます。しっかりとした言語化が難しい状態であっても、断片的な感情や用語をINPUTに入れ、ラボやチームの価値基準に合ったルールを整理すると何らか表出される。それをチームで編集してより分かる言語化をしていく事が大事だと思っています。

 また、その言語同士を連結して新たな知見にしていくことも、以前より楽にできるようになると感じています。こうした表出化・連結化のノウハウを一定作ることが出来ればよりチームで価値が出せると考えており、その為にもまず個人での表出・連結のノウハウを生成AIを用いた記事作成の中で学んでいってほしいと考えています。

 ゆくゆくは表出化・連結化の中で、文章だけでなく簡単なプロダクトもあっという間に出力できる時代になっていくと思いますが、その際には個人でチームでどれだけ上記SECIモデルを回せるかが決め手になると考えています。

 また、そういった取組を繰り返す中で集合的知性(Collective Intelligence)が強く育まれます。
 集合的知性とは、一人では出せない知恵やアイデアが、チームでの対話や協働を通して自然に生まれてくる力です。生成AIの出力をきっかけに「もっとこうしよう」「この視点も面白い」と話し合う中で、一人では届かない地点にたどり着く。それはまさに、チームで発信を磨くときに生まれる力です。
 生成性をうまく使うことで、SECIモデルの「知識を外に出し、チームの中で共有し、再び自分に根づかせる」サイクルがスムーズに回り始めます。個人の発信は、こうしてチームの知を育てる原動力になっていくのです。

まとめ ― 発信の力は、まずは個人から

 発信は自分に向き合う活動でもあります。生成AIを使ったとしても自分に向き合いながら自分が何を大切に思い、どんな言葉で表したいのかを考える中で、普段は気づかない自分自身の価値観や想いに出会うことができるのです。

 そして、そうして生まれた個人の発信は、チームの中で必ず価値を持ちます。SECIモデルが示すように、知識は一人の中に留めておくものではなく、対話や共有を通して成長していくものです。生成AIの力も借りながら、一人ひとりの発信が集まり、チーム全体の可能性を大きくひらいていきます。

 だからこそ、まずは個人で「生成的・創造的な発信」に挑戦してみてください。あなたの言葉は、きっとチームに新しい風を吹かせるはずです。私自身もまた、自分の声を探しながら、これからも発信を続けていきたいと思います。