【本調査の目的】
・顧客本位の業務運営の目的を改めて理解する。
・各社の対応とその差分があれば、差異の理由を知る。
・顧客の声に注目し、収集・分析方法を調査し、課題や今後の取組の方向性の示唆を見出す。
1.金融庁の「顧客本位の業務運営の原則」(2020年1月15日改定)
・ 市場ワーキング・グループで、国民の安定的な資産形成を図るためには全ての金融機関(金融事業者)が顧客本位の業務運営に努めることが重要と判断
・その中で、以下の観点で原則が策定された。
①金融商品の分かりやすさ、利益相反管理体制の整備に向けた法改正が図られたが、これが最低基準となり金融事業者による 形式的・画一的な対応を助長する結果となっている。
②本来金融事業者が自ら主体的に創意工夫を発揮し、ベストプラクティスを目指し顧客本位の商品・サービスを競い会うのが望ましい。
③そのためには従来型のルールベースでの対応ではなく、プリンシブルベースのアプローチが有効と考える。
したがって、当局で「顧客本位の業務運営に関する原則」を策定し各金融事業者に示すことが適切である。
・原則の内容
内容についての詳細は、以下リンクを参照願いたい。
https://www.fsa.go.jp/news/r2/singi/20210115-1/02.pdf
本原則では、「金融事業者」という用語を特に定義していない。顧客本位の業務運営を目指す金融事業者において幅広く採択されることを期待する。
2.顧客本位の業務運営
上記金融庁の原則について、以下の観点で纏めてみた。
全生保全社について調査は困難であるため、代表的な内国生保、損保子会社、外資系生保、ネット系生保、カタカナ生保
について調査した。
全生保の調査結果ではないため、全てをカバーしきれていない旨ご了解頂きたい。
①金融庁の原則をキーとして、内国生保、損保子会社、外資系生保、ネット系生保、カタカナ生保に分類
②上記分類した生保の代表的な取組と特徴的な取組についての傾向分析。(エビデンスとしては以下ご参考参照)
③上記分析の結果、差異があれば「なぜか」の推測・示唆
④保険会社として、どのような声をどういった手段で取得しどう活用しているのか。
2-1.上記①②の分析結果
金融庁原則 | 上記①の生保分類での各社取組傾向 | 各社取組のトピックス的要素 |
---|---|---|
原則2【顧客の最善の利益追求】 | 各社で目立った差異は見られない。 商品スキルの従業員教育、お客様の声を集約し経営に活かす | アフラックの取組は興味深い ・キャンサーエコシステムの構築に向けた取組 キャンサーエコシステムの構築に向けた取り組み | アフラックの価値創造ストーリー | 企業情報 (aflac.co.jp) マニュライフの行政処分について カスタマーセントリティを前面に |
原則3【利益相反の適切な管理】 | 各社で目立った差異は見られない。 ・資産運用部門の独立性 ・代理店手数料体系の公表 | ライフネット生命では、付加保険料について一部金額提示 ・保険商品の付加保険料の開示 insurance_table_2021.pdf (lifenet-seimei.co.jp) |
原則4【手数料等の明確化】 | 各社で目立った差異は見られない。 ・特定契約のお客様負担費用の説明 ・外貨建てについては、他の商品比較 ・代理店手数料体系の公表 | 代理店手数料体系については、各社公表しているが 抽象的で、いったいいくらなのか分からない。 |
原則5【重要情報のわかりやすい提供】 | 各社で目立った差異は見られない。 ・重要情報の提示方法 ・分かりやすい情報提供 | 日本生命 みらいコンサルタントの活用 みらいコンサルタント|日本生命保険相互会社 (nissay.co.jp) ソニー生命 ・Lipssというシミュレーションツールを使用し、ライフプランに沿った提案(自社開発?) ライフプランニング | ソニー生命保険 (sonylife.co.jp) |
原則6【顧客にふさわしいサービス提供】 | 各社で目立った差異は見られない。 ・お客様のニーズにあった商品提供 ・高齢者対応 ・契約内容の情報提供・アフター ・保険金・給付金の漏れのない支払い ・職員、代理店の研修・教育 ・魅力あるサービスの提供 | 第一生命 健康増進のスマホアプリ「健康第一」 契約者のみなさまへ 健康増進アプリ「健康第一」|第一生命保険株式会社 (dai-ichi-life.co.jp) ミラシルを通じたQOLサービスの紹介 ミラシル by 第一生命 (dai-ichi-life.co.jp) 住友生命 サポートプログラムのご案内 | 先進のコンサルティング&サービス | 住友生命保険 (sumitomolife.co.jp) 未来を変えていく、健康増進型保険 住友生命 「Vitality」 | 住友生命 (sumitomolife.co.jp) あいおい生命 家計簿アプリ「マネーフォワードME」に個人年金の情報連携 『マネーフォワード ME』、三井住友海上あいおい生命の個人年金保険(確定年金)の連携を開始|株式会社マネーフォワード (moneyforward.com) |
原則7【従業員に対する適切な動機づけの枠組み等】 | 各社で目立った差異は見られない。 ・全役職員に対する、当原則の徹底・教育 ・お客様第一の方針に基づく評価 |
2-2.分析結果の総評
①取組内容について
金融庁の原則2~7について、内国生保、損保子会社、外資系生保、ネット系生保、カタカナ生保の
代表的生保について調査したが、各社目立った差異はなかった。
金融庁提示の原則に対して、あたりさわりのない回答。
②気になった取組
取組において、興味深い内容については上記のとおり。
詳細記載は割愛し、URLを添付した。
3.保険会社として、顧客の声の収集
INPUT、PROCESS、OUTPUTに分けて記載した。
①INPUTについて
相談、苦情、意見、要望等があげられるが、苦情については各社件数の公表にとどまっている。
部分的だが公表されているのは意見、要望。
②PROCESS
他の生保もほぼ同様と思われるため、ここでは日本生命の体制を記載した。
ネット系についてはコンタクトセンターが中心。
③OUTPUT
お客様の声と対応(例示)は以下に記載のとおり。意見・要望に対する対応。
気になったのは、
日生の「日本生命手話通訳リレーサービス」の導入 ⇒ 生保始め他業種についても順次導入している。
日生の先進医療給付金の医療機関宛直接支払いについては、既に多くの生保が実施しており日生は遅い方。
ライフネットの「AIサイト内検索機能」 ⇒ 見つけたい情報をサイト内で探しまくる手間の解消
ライフネットの「専用アプリ(MYページが面倒の声から)」 ⇒ 日生、アフラック、ソニー等順次導入
④OUTPUTした内容についてのお客様へのフィードバック
各社HP上のお客様の声白書等の様式、ディスクロージャー資料、等でフィードバックしているのが一般的。
ライフネット(ネット系)ではメール・お手紙等を出している生保もある。