厚労省が公的保障制度に関するポータルサイトを立ち上げた
金融庁は生保の販売時に年金や健保などの公的保険制度を適切に情報提供するよう生保会社に求め、生保の営業手法に関する監督指針を改正しました。
ただ、生命保険業界内には「公的保険の仕組みは本来国や自治体がすべき」「我々(生命保険会社)が説明するのは、筋が通らない」との声もあります。
そこで、金融庁は2022年に厚労省と連携し、厚労省が公的保障制度について説明するサイトを、金融庁が「公的保険について(民間保険加入の検討にあたって)」のサイトをそれぞれ立ち上げました。
年金シミュレーターは、上記厚労省のサイト上に公開されており、パソコンやスマホから将来の年金額をシミュレートすることが可能なツールです。(4月25日から試験運用を開始)
働き方の変化に伴う年金額の変化の「見える化」を目的としているようです。
公的年金シミュレーションをしてみた主旨
実際の生命保険の販売現場では、顧客の公的年金額の試算をすることは困難であり、「一般的にはこれぐらいの金額である」程度の説明しかできないのが現状です。
厚労省の年金シミュレーターの使い方を理解することで、金融庁の言う顧客本位に則った保険提案ができるか、また、InsurTechの検討材料とならないかと考え当資料を作成しました。
シミュレーション手順と実際に使ってみた感想
(出典:以下の入力フォーマット等は厚生労働省ホームページから引用)
a.使用してみた感想
私見ですが、UI/UXはよく、使い勝手が良い印象です。
・ID、パスワードは不要ですぐに試算を開始でき、入力もスムーズに行える。
・年収、働き方などいろんなパターンでの試算が可能。以下の表のグラフであれば、年収とか年金開始年齢等スライドバーを動かせばグラフに反映される。
・HP上に操作動画もあり、誰でも試算が可能。使い勝手が良い。
b. 使用手順
①生年月日入力
1987年1月1日(35歳)と入力
②働き方・暮らし方を入力 ここでは、22~45歳まで会社員として勤務、
年収500万次に転職し46歳~70歳まで会社員として勤務、年収300万を想定
働き方・暮らし方については①~②③・・・と入力可能
③受給開始年齢を入力 ここでは65歳とした
④国民年金保険料免除期間を入力 ここでは入力なしとした
⑤試算をタップ
年収・就業完了年齢・受給開始年齢はスライドバーを動かせば、グラフも変化します。
総評
イイね!
年金シミュレーターで試算した結果はCSV形式で出力可能となっており、民間の家計管理アプリ等に年金受給見込額を取り込むなど官民の垣根を超えた活用が期待できる。
ココがダメ!
保険提案をするにあたって、顧客のプライベート情報があったとしても、ハンドで公的年金額を試算することは困難。
計算が複雑で、専門家でないと不可能レベル・・・。
惜しい!
顧客の承諾を前提として、厚労省の年金シミュレーションを保険設計書作成時組み合わせることが可能か検討余地はあるのではないか。
これができれば、金融庁の言う顧客本位の提案が可能。
保険設計書作成ツールに年金シミュレーションを連携できれば、顧客に年金部分についての入力をしてもらった上で、設計書にその内容を組み入れる事は可能と思われる。いわゆるパーソナライズ提案となる。
ただし、年金見込額はあくまで見込みなので、設計書に組み入れた場合ガード文言を明示しておかないと後日トラブルの可能性がある。