この記事はInsurtechラボ202606リレーブログの1日目の記事として書いています。
学びフェスとは
社内で3か月に1回毎日勉強会実施する企画を実施しています。普段は週に数回動画鑑賞中心の勉強会ですが、3か月に1回お祭り的に実施をしており、もう2年以上実施しています。
学びフェスは、普段あまり関わらないプロダクトやサービス、仕事の考え方について、1か月かけて学びを深めていく取り組みです。勉強会、動画視聴、読書会、LT大会、社外発表の生中継など、いろいろな形で学ぶコンテンツを用意し、「わかること」だけでなく、「まだわからないこと」も増やしていくことを大切にしています。
今回は初日なので、2026.6月の学びフェスのテーマである「自己効力感 ~ Self Efficacy」について説明しました。
自己効力感について
自己効力感とは、簡単に言えば「自分にもできそう」と思える感覚です。能力そのものというよりも、「この状況なら自分も行動できそうだ」「まだ完璧ではないけれど、まず試してみてもよさそうだ」と感じられるかどうかがポイントになります。
仕事や学習の場では、この感覚がかなり重要だと思っています。知識があっても、「自分には無理そう」と思っていると行動にはつながりません。逆に、まだ十分に詳しくなくても、「少しならできそう」「まず聞いてみよう」「小さく試してみよう」と思えれば、そこから学びが始まります。
今回の学びフェスで目指したかったのは、まさにこの「自分にもできそう」を育てる場です。
自己効力感を高める要因として、達成経験、代理経験、言語的説得、情動・生理的状態の4つがあります。

達成経験とは、小さな「できた」を積み重ねることです。学びフェスでいえば、いきなり完璧な発表をする必要はありません。LTで少し話してみる、チャットで質問してみる、MIROに感想を書いてみる。それだけでも、自分の中に「参加できた」「発信できた」という小さな達成が残ります。
代理経験とは、身近な人の挑戦や成功を見ることです。すごい人だけが一方的に話す場では、「あの人だからできる」で終わってしまうことがあります。一方で、同じ職場の人や、少し前まで自分と同じように悩んでいた人が話しているのを見ると、「自分も少しならできるかもしれない」と思いやすくなります。
言語的説得とは、具体的な言葉で支えることです。ただ「よかったです」と言うだけではなく、「この観点が自分の仕事にもつながりそうだった」「この説明で理解が進んだ」「その問いがあったから議論が深まった」と伝える。そうした具体的なフィードバックがあると、話した人や行動した人にとって、自分の行動が意味を持ったという実感につながります。
そして、情動・生理的状態とは、安心して試せる場をつくることです。緊張や不安が強すぎる場では、人はなかなか動けません。失敗しても大丈夫、未完成でも出してよい、うまく話せなくても聞いてもらえる。そういう空気があるからこそ、「やってみよう」と思えるのだと思います。
実際に、今回いただいたコメントの中にも、
「普段、あまり自己効力感について考えられていないので、今回のフェスを通じて『自分にもできそう』があるか考えてみたい」
といった感想をもらいました。このコメントは、今回のテーマに対するかなり素直で重要な反応だと思いました。自己効力感は、普段の仕事の中で意識的に扱われることはあまり多くありません。私たちはつい、スキルがあるか、成果が出ているか、知識が足りているか、という見方をしがちです。
しかし、その手前に「自分にもできそうと思えているか」という問題があります。
勉強会に参加していても、「聞くだけならできるけれど、発表は無理」「質問したいけれど、変なことを言ったらどうしよう」「自分の経験は大したことがないから話すほどではない」と感じることがあります。こうした感覚は、能力の問題というよりも、自己効力感の問題として捉えた方がよいのかもしれません。
また、別のコメントに「完璧を求めると『できそう』とは思えない」というものがありました。これも非常に大事な視点です。
勉強会や発表の場で、最初から完成度の高い資料や、整理された話、立派な成果を求めてしまうと、参加のハードルは一気に上がります。「ちゃんとした内容でなければ出してはいけない」「人前で話すなら、きれいにまとめなければいけない」と思うほど、最初の一歩は重くなります。
もちろん、質を高めることは大切です。ただ、学びの場において最初から完璧を求めすぎると、「やってみよう」という気持ちを削ってしまうことがあります。むしろ、最初は荒くてもよい。短くてもよい。自分の言葉で話してみること自体に意味がある。そういう前提があって初めて、学びは広がっていくのだと思います。
その意味で、「失敗してもいいから『やってみよう』と思える文化も必要かな」というコメントも、学びフェスの本質にかなり近いと感じました。
自己効力感と自尊心と内発的動機
今回の資料では、自己効力感とあわせて、自尊心と内発的動機についても扱いました。

自己効力感が「自分にもできそう」だとすると、自尊心は「自分には価値がある」と感じることです。この2つは関係しています。自尊心がある程度あると、チャレンジしやすくなります。一方で、チャレンジして「できた」と思える経験が増えると、自尊心も少しずつ育っていきます。
ただし、自尊心は高ければ高いほどよい、という単純なものでもありません。資料でも触れたように、自尊心が高すぎると、無謀な挑戦や大きな失敗につながることもあります。だからこそ、健全な自尊心が大事です。
いただいたコメントの中に、「自尊心高い人はフィクションでしかお目にかかったことがないかも・・・」というものもありました。少し笑ってしまう表現ですが、実感としてはよくわかります。多くの人にとって、「自分には価値がある」とまっすぐ思うのは、意外と難しいことなのかもしれません。
だからこそ、自尊心をいきなり高めようとするよりも、小さな自己効力感を積み重ねる方が現実的なのではないかと思います。小さく発表する。誰かの役に立ったと言ってもらう。自分の問いが場を少し動かす。そうした経験が積み重なることで、「自分もこの場にいてよい」「自分の学びや経験にも意味がある」と思えるようになるのではないでしょうか。
内発的動機についても同じです。ダニエル・ピンクの『モチベーション3.0』や、エドワード・デシの自己決定理論でも、自律性、有能感、関係性の重要性が語られます。
自律性とは、自分で選んでいる感覚です。有能感とは、自分が少しずつできるようになっている感覚です。関係性とは、周囲とつながっている感覚です。
受託開発や大きな組織の中では、この3つが下がりやすい場面があります。作るものがあらかじめ決まっている。自分の裁量が少ない。ドメイン知識やシステム知識が足りず、力を発揮しづらい。昔ながらの慣習の中で、アジャイルな関係性を作りづらい。こうした状況では、内発的動機が湧きにくくなるのも自然です。

だからこそ、学びフェスのような場では、知識提供だけでなく、自律性、有能感、関係性に小さく触れられることが大切だと思います。
自分で聞きたい勉強会を選ぶ。自分の関心に近いテーマに参加する。少しだけコメントを書く。誰かの発表を聞いて、自分の仕事との接点を見つける。そうした小さな行動が、自律性や有能感、関係性を少しずつ回復させていきます。
学びフェスは、知識を得る場であると同時に、「自分にも話せる」「自分にも試せる」「同じような人も挑戦している」と感じられる場でありたいと思っています。
今回の学びフェスを通じて、参加した人それぞれが、自分の中の「じぶんにもできそう」に少し目を向けるきっかけになればうれしいです。ありがとうございました。











