スクラムマスターの組織的育成について

この記事はスクラムマスターアドベントカレンダー2023の7日目の記事となります。

 Insurtechラボでは、チームが複数あります。元々、メンバーのアジャイル経験も少ない状態で始めたので学習目的の要素が強く1チームのメンバーも10人近い形で大きくなっているチームもあります。ただ、経験も積んできたことも有り、新規プロダクト構築のスピードを上げるべく、もっと小規模なチームにしてチームを増やそうと考えていたのですが、そこで、プロダクトオーナースクラムマスターが増えない、育てられないという問題にぶち当たっています。この記事ではスクラムマスターの育成について試行錯誤している内容を書きたいと思います。

そもそものスクラムマスターの意味合いと重要性

 スクラムマスターは知らない人からすると本当にわかりづらい職種な気がしています。私の会社ウォーターフォール中心なこともあり、組織でスクラムマスターの重要性を語るのですが、うまく説明できず、まったく伝わりません。

スクラムマスターは、スクラムガイドで定義されたスクラムを確⽴させることの結果に責任を持つ。スクラムマスターは、スクラムチームと組織において、スクラムの理論とプラクティスを全員に理解してもらえるよう⽀援することで、その責任を果たす。
 スクラムマスターは、スクラムチームの有効性に責任を持つ。スクラムマスターは、スクラムチームがスクラムフレームワーク内でプラクティスを改善できるようにすることで、その責任を果たす。スクラムマスターは、スクラムチームと、より⼤きな組織に奉仕する真のリーダーである。スクラムマスターは、さまざまな形でスクラムチームを⽀援する。

スクラムガイド2020

上記がスクラムガイドに書いてあるスクラムマスターについての説明なのですが、

これからの組織の改善においてはスクラムマスターのようなスキルが重要だと思います!スクラムマスターのスキルを増やしましょう!!

上司

はぁ。でもまだスクラム開発やっている所は少数だし、スクラム開発が増えるか分からない中ではやめた方が良いのでは?

自社のロールにない職種だし外部調達した方が効率的では??

といった形で、スクラムをやった事がない人でないと、絶対に伝わらない気がしています。(確かにスクラムガイドでのスクラムの事しか書いてないし(あたりまえか・・・)、上司のいうことの方が正しいような・・・)

 ただ、それでもスクラムマスターは組織に必要かと思っています。下記はスクラムガイドの言い方を勝手に汎化したものですが、スクラムマスターが必要なのではなく、下記のような人材が必要と思っていて、こういった人材はスクラムをやろうがやるまいが、これから非常に必要とされている人材と感じています。(実際、大規模ウォーターフォール開発でもスクラムマスター人材はとても効果的だった)

 スクラムマスターは、求める組織像に向かって、組織で検査/適応を回すスキームを確⽴させることに責任を持つ。スクラムマスターは、そのための原則やプラクティスを全員に理解してもらえるよう⽀援することで、その責任を果たす。
 スクラムマスターは、チーム自身がより有効に動けるようにすることに責任を持つ。スクラムマスターは、そのための方法論を知り、適用することで、その責任を果たす。
スクラムマスターは、さらにそのチームだけでなく上位組織に対しても、働きかける真のリーダーである。

 VUCAと言われる時代、正解が見えない中ではチームで「検査↔適応」のフィードバックループを素早く回し、チームとしての学びを最大化することが必要で、そのための専門家がスクラムマスターだと思っています。

 成熟したスクラムチームではスクラムマスターは不要といった話もありますが、ただ、上記のようなことが出来る人物もしくはチームは必ず必要となります。

 これはスクラムマスターだけがスクラムマスタースキルを習得すればよいということではなく全員(特にマネージメント層は必須!!)が必要なスキルだということです。

実際に育成に向けて取り組んでいる事

 上記の通り、スクラム以外でもスクラムマスターは必要と思っていますが、難しい事に、スクラムの中でないと、スクラムマスターを育てるのは難しいのも事実だと感じています。

 そんな中でスクラムマスタースキル向上のために取り組んでいる施策が下記となります。

1.入り口となる勉強会の実施

 毎週40分程度、アジャイルに関する座学の勉強会を実施しています。これは聞き専OK、アジャイル知らない人もOK、途中入退室もOKという極力ハードルを下げた勉強会にしていて、アジャイルの入り口として、続けることを目的に進めています(65回くらい続いています)。これは自組織以外のメンバーも含めて広く門戸を空けています(参加者、なかなか増えませんが・・・)

2.スクラムガイド読み合わせの会

 1とは異なりインタラクティブに話ができる勉強会として、ディスカッション主体のスクラムガイドの勉強会を毎週、実施しています。詳細は下記に記事にしています。

3.ハンガーフライト

 各チームのスクラムマスターと(アジャイルコーチ)が集まって、スクラムマスターでの課題等を共有するハンガーフライトを週1で実施しています。

※ただ全員集まれることはほぼないですが・・・。

4.スクラムのチェックシート

 各チームのスクラムがどの程度できているか自分たちで作ったチェックシートでスクラムマスターがチェックするといった運営をしています。このチェック結果を上記ハンガーフライトで共有しながら共通的な知識を育んでいます。(チェックシート作成は下記2つのシートを元に作成しました)

ヘンリックさん(川口さん翻訳)のScrum Checklist

Ryuzeeさんのスクラムチーム用セルフチェックリスト

5.他チームのスクラムイベントの見学と1on1

 上記№4のチェックシートはチェックすること自体は「自身のスクラムマスターの知識が整理出来たり、各チームがどの程度スクラムのフレームワークを守れているか?」ということがわかり、よかったのですが、そこから打ち手に結びつきませんでした。(チェックNGの事に対して対応すべきなのか?またどのように対応するのか?等の評価が難しい)

 そのため、打ち手を考える為にも実際の他のチームのスクラムイベントに参加し感想をSM同士が1on1で言い合ってみるという施策をやりました。デイリースクラムで実施したのですが、好評だったので次はふりかえりをテーマに試してみたいと思います。

6.業務の中での学習

 1~5で書きましたが、実際にスクラムを実施して学ぶのが一番効果的です。ただし、経験は出来ても経験の中でチームの学びを得られるかは別で、うまく学ぶためには業務外でも1~5のような学習や対話の場を作ることは必要と感じています。

感想

 ということでスクラムマスターについて色々取り組んでいる内容でしたが、実際はとても苦戦しています。ただ、1年半前を考えると『スクラムマスターって何?おいしいの?』という感じだったのでそこからすると大きく進んだかなぁとは思います。

 一定大きな企業だと「どう広げていくか?」というスキームは非常に重要だと思っていて、試行錯誤しながら、うまく広げるスキームも見出したいと思っています。(だいたい好事例を聞くと「トップ自ら学んで推進した!」みたいな事例が多いのですが、ミドル、ボトムから進めることはできるんでしょうか?引き続きチャレンジ進めていきたいと思います)

 読んでいただきありがとうございました。