本日の社内勉強会では、社外登壇やプロポーザルの書き方について話しました。
せっかくなので、勉強会で話した内容や、自分自身が社外登壇を続ける中で感じていることを、少し整理して残しておこうと思います。
社外登壇というと、少し大げさに聞こえるかもしれません。
「自分が外で話せるようなことなんてあるのか」
「すごい実績がある人がやるものではないか」
「会社の代表として話すほど、まだ整理できていない」
そう感じる人も多いと思います。私自身も、最初は社外登壇なんて全く考えていませんでした。ただ、この営みが自分の成長を大きく後押ししてくれた感覚があります。だからこそ、社内でもぜひ勧め続けたい取り組みになっています。
社外登壇やプロポーザルを書くメリット
社外登壇をしたり、プロポーザルを書いたりする取り組みは、何のために行うのでしょうか?
ここでは私が思うメリットを4点紹介します。
①知識やスキルが定着し、理解が深まる
普段の仕事の中では、経験はどんどん流れていきます。会議で話したこと、チームで試したこと、うまくいったこと、失敗したこと。どれも大事な経験なのですが、そのままだと「なんとなく大変だった」「なんとなく良かった」で終わってしまうことも多いです。
しかし、プロポーザルを書くためには、その経験を一度立ち止まって整理する必要があります。何に困っていたのか。なぜそれをやろうと思ったのか。実際に何をしたのか。結果として何が分かったのか。聞いた人に何を持ち帰ってほしいのか。
この問いに向き合うことで、自分の中にある経験が、ただの思い出ではなく、再利用可能な知識に変わっていきます。つまり、登壇準備そのものが強い学習プロセスになり、同時にリフレクションにもなります。
②発信するところに知識が集まる/再利用可能性が高まる
これは、社外発信を続けていて特に感じることです。自分が何かを発信すると、それを見た人から別の知見や事例を教えてもらえることがあります。「うちではこうやっています」「この資料も参考になります」「この考え方に近い話があります」といった形で、自分一人では出会えなかった情報に触れられるようになります。
知識は、持っているだけではあまり広がりません。外に出して初めて、他の知識とつながります。そして、一度言語化した内容は、別の勉強会、社内説明、ブログ、提案資料などにも再利用できます。発信は、一回限りの消費ではなく、自分や組織の資産を増やす活動でもあります。
③世の中とつながる/世の中の状況が知れる
会社の中にいると、どうしても自社の常識が強くなります。自分たちが悩んでいることが特殊なのか、よくあることなのか。自分たちの取り組みが進んでいるのか、まだ入口なのか。こうした感覚は、社内だけにいるとなかなか分かりません。
社外カンファレンスや勉強会に出ると、同じような課題に向き合っている人たちに出会えます。自分たちとまったく違う業界の人が、意外と同じ悩みを持っていることもあります。一方で、自分たちが当たり前だと思っていた実践が、外から見ると面白い事例だったと気づくこともあります。
社外登壇は、自分たちの現在地を知るための窓にもなります。
④名前が売れる(個人/組織のブランディング)
「名前が売れる」と言うと少し俗っぽく聞こえるかもしれませんが、これは決して悪い意味ではありません。社外で発信している人や組織は、「この領域に関心がある」「このテーマで実践している」「外部と対話する姿勢がある」と認識されやすくなります。
これは個人にとっても、組織にとっても意味があります。個人としては、社外の仲間や機会とつながりやすくなります。組織としては、採用、共創、案件創出、社内外からの信頼形成につながる可能性があります。
もちろん、ブランディングだけを目的にすると薄くなります。ですが、自分たちの実践を誠実に発信し続けた結果として、名前や活動が知られていくことは、十分に価値のあることだと思います。
社外カンファレンスにプロポーザルを書く上での二つのメンタリティ
社外カンファレンスにプロポーザルを書く上で、私が大事だと思っているメンタリティが二つあります。
一つ目は、「花より根」です。
登壇というと、どうしても発表当日の華やかな場面に目が向きます。大きな会場で話す。SNSで反応をもらう。資料が多くの人に見られる。そうした「花」の部分は確かにあります。
しかし、本当に大事なのは、その前にある「根」の部分です。
自分が何に違和感を持っているのか。どんな経験をしてきたのか。なぜその話をしたいのか。誰に届けたいのか。自分の中にある問いや実践が、しっかり根を張っていること。むしろ、そちらが本質だと思っています。
これは「13歳からのアート思考」で紹介されている考え方にもつながります。

二つ目は、「学会よりコミケ」です。
もちろん、カンファレンスには学びの場としての側面があります。きちんと構成された発表、再現性のある知見、理論との接続も大事です。ただ、あまり「正しもの、選ばれるものでなければならない」と思いすぎない方がよいと考えています。
むしろ、自分が本当に面白いと思っていることを持ち寄り、場に集まる人たちと一緒に推し合う感覚が大事です。
「この実践、まだ粗いけれど面白いと思う」
「この問いにずっと引っかかっている」
「この失敗から見えてきたことを誰かと話したい」
「このカンファレンスの場なら、この話を一緒に面白がってくれる人がいるかもしれない」
そういう熱量がある方が、プロポーザルとしても魅力が出ると思っています。
カンファレンスを、知識や権威によって良い成果が選ばれる場としてだけ捉えると苦しくなります。そうではなく、発表者、参加者、運営者、スポンサーなど、その場に関わる人たちが、それぞれの立場から表現を持ち寄り、互いに受け入れ、推し合いながら作り上げていく場として捉える。そこには単純な評価の上下ではなく、「この表現を続けてほしい」「この実践をもっと聞きたい」「この場を一緒に育てたい」という推しの文化があります。これはコミケの文化と似ていると思っています。
すべての表現者を受け入れ、継続することを支え、表現の可能性を少しずつ広げていく。そういう場としてカンファレンスを捉えると、プロポーザルを書くことは、審査に通るための作業というより、自分もその場づくりに参加するための一歩になります。そう考えると、プロポーザルを書くハードルも少し下がるのではないかと思います。

社外登壇先の探し方
では、実際にどこで登壇すればよいのでしょうか。
最初の一歩としては、ConnpassなどでLT募集を探すのが分かりやすいです。LTは比較的短い時間で話せるため、初めての登壇にも向いています。テーマが自由な会もありますし、特定の技術やアジャイル、プロダクト開発、組織づくりなど、関心に近いコミュニティを探すこともできます。
もう一つは、カンファレンスにプロポーザルを投稿することです。
カンファレンスは少しハードルが高く感じるかもしれません。ただ、カンファレンスには明確なテーマや参加者層があります。そのため、「この人たちに何を届けたいか」を考えやすいという良さもあります。
また、カンファレンスに参加したら、関係者や登壇者をSNSでフォローしておくのもよいです。プロポーザル募集の情報はSNSで流れてくることが多いからです。実際に参加したカンファレンスであれば、場の雰囲気や参加者の関心も分かっているので、自分が何を出せそうかも考えやすくなります。
最初から大きなカンファレンスを狙わなくてもよいと思います。小さなLT、社内勉強会、コミュニティイベント、ブログ投稿。そうした発信の積み重ねが、次の登壇につながっていきます。
プロポーザルの書き方
私自身は、プロポーザルを書くときに生成AIを使うことが多いです。ただし、生成AIに「良い感じのプロポーザルを書いて」と丸投げするのではありません。
まず、自分が話したいことを生成AIに伝えます。その上で、深掘りや反証につながる質問を出してもらいます。
こうした質問に答えていく中で、自分の意見が少しずつまとまっていきます。最初はぼんやりしていた「話したいこと」が、だんだん「誰に、何を、なぜ届けるのか」に変わっていきます。
次に、仮説キャンバスを使って整理します。

仮説キャンバスでは、対象となる人の状況、顕在課題、潜在課題、代替手段、提案価値、実現手段、優位性、評価指標などを整理します。これは本来、事業やプロダクトの仮説を整理するためのものですが、プロポーザル作成にもかなり有効です。
なぜなら、登壇も一種の価値提案だからです。
聞き手は誰か。その人は何に困っているのか。今はどんな代替手段でしのいでいるのか。
自分の発表は、どんな解決状態を提示するのか。それを自分が話せる理由は何か。
こう考えると、プロポーザルは単なる発表概要ではなく、「このセッションには聞く価値があります」という提案になります。
仮説キャンバスをブラッシュアップした後、最終的にプロポーザルの形に仕立てていきます。参考で私が使っているプロンプトも載せておきます。
ただ、生成AIを使用する上では、注意点もあります。
生成AIを使うと、もっともらしいプロポーザルはすぐに作れます。
しかし、ここで注意しなければいけないことがあります。それは、自分が本番で発表できないプロポーザルを書いても意味がないということです。
文章として整っている。カンファレンス受けしそう。流行りのキーワードが入っている。一見、学びがありそうに見える。
こうしたプロポーザルは、生成AIを使えば作れてしまいます。ですが、自分の実践や問いに根ざしていないものは、採択されたとしても発表準備が苦しくなります。話していても、自分の言葉になりません。
だからこそ、先ほどの「花より根」「学会よりコミケ」というメンタリティが重要になります。
自分の探究に根ざしているか。
自分が本当に面白いと思っているか。
このカンファレンスの場に持ち寄りたいと思えるか。
聞いた人と対話したいテーマになっているか。
生成AIは、思考を深める壁打ち相手としては非常に有効です。しかし、話す理由そのものまでは代わりに作ってくれません。最後に必要なのは、自分がそのテーマを持って場に立つ納得感だと思います。
<1.仮説キャンバスを作成するプロンプト>
優秀なコンサルタント、プロダクトマネージャーとして仮説キャンバスを作成してください。
仮説キャンバスは、Markdown形式で下記フォーマットの質問項目の中身を箇条書きで埋めた形で出力ください。
仮説キャンバスを考えるスコープは下記話したいことをベースに作成お願いします。なお、作成にあたって、確認したい内容があれば先に質問してもらえれば答えます。
♯話したい事
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# 仮説キャンバス
## A.対象
下記1~8を考えるべき対象の顧客群をここに記載する
### 1. ビジョン(Vision)
中長期的に顧客にどういう状況になってもらいたいか?
### 2. 状況(Situation)
どのような状況にある顧客が対象なのか(課題が最も発生する状況とは?)
### 3. 傾向(Behavior)
同じ状況にある人が一致して行うことはあるか?
### 4. 顕在課題(Pain)
顧客が気づいている課題に何があるか?
### 5. 代替手段(Alternatives & Gaps)
課題を解決するために顧客が現状とっている手段に何があるか?(さらに現状手段への不満はあるか?)
### 6. 潜在課題(Root Causes)
多くの顧客が気付けていない課題、解決を諦めている課題に何があるか?
### 7.チャネル(Channel)
状況にあげた人たちに出会うための手段は何か?
### 8.市場規模(Market Size)
対象となる市場の規模感は?(TAM(Total Addressable Market)、SAM(Serviceable Available Market)、SOM(Serviceable Obtainable Market)
## B. 主体
下記9~14を考えるべき主体(自分たちが何者なのか)をここに記載する
### 9.目的(Purpose)
われわれはなぜこの事業をやるのか?
### 10.提案価値(Value Proposition)
われわれは顧客をどんな解決状態にするのか?(何ができるようになるのか?)
### 11.実現手段(How / 戦術)
提案価値を実現するのに必要な手段とは何か?
### 12. 優位性(Unfair Advantage)
提案価値や実現手段の提供に貢献できるリソース(資産)が何かあるか?
### 13. 評価指標(Evidence)
どうなればこの事業が進捗していると判断できるのか?(指標と基準値)
### 14.ビジネスモデル(Business Model)
どうやって儲けるのか?
<2.仮説キャンバスをブラッシュアップするプロンプト>
作成した仮説キャンバスに関して、下記仮説の一本線の整合をまず確認したいです。
作った仮説キャンバスをもとに下記成り立つストーリラインを作成下さい。
[]内のメッセージを仮説キャンバスからうまく編集して、一息で読んで読みやすいストーリーラインにしてください。
ストーリーラインを選びたいので、あえて大きく異なる3つのストーリーラインを作成してください。
[2.状況]な人たちは[課題(4.顕在課題、6.潜在課題)]を抱えている。
だからこそ、[5.代替手段]の現状を手段として用いているが、
[5.代替手段の不満・不足]があり、十分ではない
ゆえに[10.提案価値]には魅力がある。
これは、[11.実現手段]によって実現される。
@番目に作成したストーリーラインに決めます。
決定したストーリーラインが中心になるように仮説キャンバスを再作成してください。
箇条書きの項目は1~2個に絞って読みやすくしてください。
<3.プロポーザルを記載するプロンプト>
今までに検討した内容を踏まえて、プロポーザルを作成下さい。Markdown形式で下記フォーマットの中身を埋めた形で出力ください。
# プロポーザルの項目
## アブストラクト
記載項目は拘らないが、背景と目的、取り組んだこと、得られた学び、参加者に伝えたいこと」等のエッセンスが伝わるように記載する。記載の形式はPASONAのフレームワーク(Problem(問題)、Agitation(共感)、Solution(解決策)、Narrow down(絞込)、Action(行動))を一定意識して、読んだ人が聞きたいと思える、アブストラクトにしてください。ただし、フレームワークはわからないように題などはいれずに文章で記載下さい。
## ターゲットオーディエンス
「セッションの学びを一番持ち帰ってくれそうなのはどんな人?」「どういう人に一番響く?」などと考え、最も効果がありそうな人を具体的に書き出す。
## ラーニングアウトカム
この発表を聞くとどんな成果が得られるか記載する。成果なので、参加者の行動がどう変化するか、何ができるようになるかという点が重要で、Outcome(成果)にはできる限り「観察可能な行動」を書くようにする。
## アウトライン
ここに発表のアウトラインを記載する。アウトラインは発表目次の形式(スライドの題名イメージ)で記載し、そのタイトルだけでなく具体的な中身のイメージも一定箇条書きで記載する
参考資料
プロポーザルを書く上では、他の人が書いた資料や記事を読むことも重要です。
特に、プロポーザルの書き方、アンチパターン、カンファレンスごとの採択観点、ラーニングアウトカムの書き方などは、先人たちが多くの知見を残してくれています。
自分だけで考えていると、「自分が話したいこと」ばかりに寄ってしまうことがあります。もちろんそれも大事ですが、カンファレンスには聞き手がいます。主催者がいます。場のテーマがあります。
参考資料を読むことで、「この内容は聞き手にとってどう見えるか」「抽象的すぎないか」「実践が見えるか」「タイトルと中身がずれていないか」といった観点を持ちやすくなります。
プロポーザルは、思いつきで書くものでも、正解を当てにいくものでもありません。自分の話したいことと、場が求めていることと、聞き手が持ち帰れることをすり合わせていく作業なのだと思います。下記に参考となる資料のリンクを添付しておきます。
終わりに
今回このテーマを話した背景には、会社の中で社外登壇する人が、まだ多くないという問題意識があります。
とはいえ、いきなり全員がカンファレンスに登壇する必要はありません。まずは、社内勉強会で話してみる。小さなLTに出てみる。ブログに書いてみる。プロポーザルを一度書いてみる。そうした小さな一歩で十分だと思います。
誰かが外に出て話すと、「自分の経験も話していいのかもしれない」と思う人が出てきます。採択されなかったとしても、挑戦したことを共有すれば、「まず書いてみるだけでも意味がある」と感じる人が出てきます。
社外登壇は、特別な人だけのものではありません。現場で悩んだこと、少し工夫したこと、うまくいかなかったこと、まだ答えは出ていないけれど誰かと話してみたい問い。そうしたものの中にも、外に出してみる価値のあるテーマはあります。
外に出て、学びを持ち帰る。内側で試して、また外に問いを投げる。この循環が少しずつ回り始めると、組織の学習文化も少しずつ変わっていくのだと思います。
こうした話を定期的に続ける中で、少しずつ芽が芽吹いていくとよいと思っています。
読んでいただき、ありがとうございました。
(この記事はInsurtech研究所2026.1Qリレーブログの記事となります)











