6月末という事で組織での対面イベントを実施していました。今回の対面イベントはいつもと違って若干の危機感を感じての実施でした。
このブログや社外登壇の場では割と前向きなお話しをしていますが、2024.1Qは我々自身問題を抱えていた3ヵ月間でした。(というか今もまだ続いている最中)
その中で実施した今回の対面イベントについてはチームレジリエンスと対話をポイントに話しています。
チームの状況
いきなりですが、下記が3ヵ月の中でチームからでた振り返りのマイナスなコメントになります。見てわかる通り、かなり深刻です。
また、毎週実施している勉強会やOSTも、ちょっと前までは一定数の人数が来たりしましたが、最近は基本的に固定化した数人だけが出るといった形になっています。
上記は学習性無力感を表す事例ですが、我々も3カ月の間に徐々にこういった形で以前よりも「自分達だけできる事、やれる事だけやろう」といった負の学習が進んだ気がしています。
(4月のDevOpsDaysTokyoの頃はかなり前向きでしたが、おそらく今そういったイベントがあっても、組織全体としてそこまで前向きになっていない気がしています)
チームレジリエンスとチームの状態
上記、学習性無力感に対してはレジリエンス(ばねが戻る力)が重要とされています。特にチームでの力(チームレジリエンス)が大切です。
今回の1Qの動きはこのチームレジリエンスを棄損する動きを組織的にもリーダーシップとしてもかけてしまったというのが結果となります。組織的な仕組みや動きをちゃんと設計しないとこんなにも影響が出てしまうのか?という点を痛感した3カ月でした。
上記書籍ではチームレジリエンスを高めるために下記青い箱が重要でそのポイントとして水色の箱の内容を挙げています。
ただし、今回の3カ月は上記水色の箱のうち下記ピンクの箱に関しては逆の動きをかけてしまい、棄損してしまったというのが現状です。
1個ずつさらっていきたいと思います。
チームの方向性/ビジョンを不透明にした
我々は過去2年間においては、ミッションやビジョンについてはかなり重視しており、ことある毎に現在やっている業務や個人の目標とビジョンについての整合について語ってきました。
ただし、今回の1Qはそれを一切行いませんでした。背景としては組織再編があります。我々の組織については上位組織に吸収されることになった為、そこの上位組織のビジョンとの整合を合わせるために、1Qはそういった新たなビジョン設定を行う方向性で考えていました。
(しかし、現実問題は統合したものの新たな組織で共通のビジョン設定を行うことは難しく、基本的には今まで通りの業務遂行となってしまった。(上位組織においてはどちらかというとビジネス的に、既存やり方に準じた進め方が重視されるため新しくビジョンを作るといった動きに馴染まなかった))
そういった背景の中、チームとしてのビジョンを曖昧にしたことでメンバーの集中を奪うきっかけになったと考えています。
組織での透明性が少なかった、対話が足りてなかった
上記組織再編があった為、元あった「Insurtech研究所」としての全体MTは廃止して上位組織での全体MTに吸収しました。過去の全体MTでは、各チームのやっている事や方向性の共有やMT自体、遊び心があるワークを中心に進めていくといった事を意識して、その場でチーム横断で検討したり、対話する練習が出来ていましたが、1QはそういうMTはまったくやらなかったので、各チームより孤立して、遊び心(学習意欲)等も減っていった気がしています。
リーダーシップ不在
上記、上位組織の対応やプロダクトがマスコミ発表されたこと等で、リーダーが忙しく、リーダーと現場の距離感が空いた事も問題としてあったと考えています。またそのような中で、POがしっかり育成で来ておらず、スプリントの運営を現場に任せる中で迷走とまた、迷走したくない事による「できる事だけやろう」というマインドが醸成されてしまったと考えています。
またリーダー層中心に運営している、運営チームにおいても十分な対話の時間を取れずバラバラになってしまった事も問題と考えています。昨年まではポイント毎に合宿したりしてすり合わせが出来ていましたが、そういった事が出来ておらず、バラバラになっているのが現状と考えています。
スキルやモチベーションの差異と対話不足
2年前、この研究所を始めた時は、アジャイルも仮説検証もプロダクトも全員素人の状態でしたが、2年間の中で成長してきました。ただ、それが逆に価値に対して強いモチベーションを持っているメンバーもいればエンジニアとして作り事を進めたいメンバー等、指向やスキルに関して、バラツキが出て、まとまることが難しくなっていると感じています。ただ、このバラツキは私としては歓迎しており、必要以上にそれをまとめないといけないというフォースが無力感を煽っていると考えています。実際はバラツキがある事を認めながら、対話を重視して、新たな価値を探索しに行く必要があるのですが、対話ではなく、討議や議論を重視している事が問題の背景にあると考えています。
雑談 | 自由な雰囲気の中で行われる気軽な挨拶や情報のやり取り |
討論 | どちらの立場の意見が正しいかを決める話合い |
議論 | 合意形成や意思決定のための納得解を決める話合い |
対話 | 自由な雰囲気の中で相互理解を深め、共通認識を作る話合い ※想定を持ち出さず、判断を保留状態にすることが求められる 自分の意見の背景に、どのような「経験」や「感情」、「価値観」が存在しているのかを知り、自分の内面をメタ認知して、相手の意見も同様に聞いていくこと |
自信を失う
上記のようなネガティブな状況が続く中でチームメンバーの自信が少しずつ失われていき、現在の状況になっていると思います。スクラムマスターやアジャイルコーチの方々とも状況の共有や方向性についてのディスカッションが出来ておらず、チーム毎の運営に委ねていた所も良くなかったと考えています。スクラムマスターやコーチも自分でできる点でフォローするといった動きが中心になっていて、組織的に対応するといった動きがかけられなかった事も反省です。
感想
といった形であっという間に微妙な状態になりましたが、逆に言えば、去年までの運営は色々と良い点が多かったと再認識しました。
作っていくのは時間がかかりますが、壊すのはあっという間というのが感想ですが、昨年度にうまくいっていたやり方もあるので、しっかり集中して、自分たち自身で少しずつ自信がつけられるように動いていければと考えています。
6月末に実施した対面MT
上記状態のため、まず6月末に午後まるまる使って、対面でMTを行いました。MTのアジェンダは下記のようになっています。
①.リーダーからチームレジリエンスをテーマに話す
②.チーム毎に3カ月間のふりかえり(ハピネスレーダー)
③.対話のワークショップ(妖怪ウォッチ(2on2+))
①.リーダーからチームレジリエンスをテーマに話す
これ間に話した問題や状況の理解についてお話しするのとリーダーとしてのビジョニングについて改めて説明しています。
②.チーム毎に3カ月間のふりかえり(ハピネスレーダー)
過去にチームで実施したふりかえりを並べて、改めて3カ月全体のふりかえりをタイムラインとその時のポジティブ、ネガティブな状況を表して共有することを実施しています。
③.対話のワークショップ(妖怪ウォッチ(2on2+))
以前も紹介した2on2というワークショップを元に遊び心を大事にしたかったので、「妖怪ウォッチ」と名前をつけて実施しています。(メンバーからは妖怪ウォッチが世代の人なんていないのでは?というツッコミがありましたw)
上記②のふりかえりでふかぼりしたい問題とその問題の起票者を特定して、そのメンバーへのインタビューとインタビューを見た感想を話しながらそれを繰り返し、問題に妖怪の名前を付けるというワークをやっています。(詳細は下記記事参照)
これは「問題を改めて認知し直す」という事と「問題に自分自身が内在している事を理解する」また「メンバーの意見をしっかり聞いて対話を捉え直す」という事を目的にしたワークにしています。3チームディスカッションしているのですが、下記妖怪が結果出てきました。
今回は対話を大事にしたいので、会自体が微妙な雰囲気になっても良いという前提で進めました。実施する中で、チーム人数が多すぎて会話しづらいフォースが働いているだったり、プロパー/パートナーでの発言の壁等が強くなっているといった課題も見えて個人的にはとても良かったと思いました。
今後について
今後については下記を実施しながら適宜対応していきたいと考えています。
組織でのMTや組織リーダー層でのMTを重視
しっかり組織としての力を付けれるように組織でのMTを再設計して、また対話や遊び心があるMTを復活させて運営していこうと思います。また必要に応じての対面MTもしっかり設計して進められればと思っています。(メンバーとも合宿等、ゆっくり話す時間をふやしたいなー)
アジャイルコーチやスクラムマスターを活用
組織の問題がどんどん深刻化した背景にはアジャイルコーチ、スクラムマスターの繋がりや対応が上手くできなかった事があると思っていますので、特にコーチ陣を含めて、目的等の再設計を行いたいと思っています。
主要プロダクトに注力
今までは、POが少ないという問題やプロダクトがまだ無いと問題からPoCや練習要素が強い開発を中心に運営をしていましたが、組織全体で集中するためにもここから数か月は主要プロダクトにより、集中して対応できればと考えています。
チーム構成の見直し
1プロダクトに集中するチームのメンバーが多すぎるといった課題が産まれます。ただ、上記の通りチームメンバーの多さも学習や対話へのモチベーションを奪っている背景もあると感じていますので、だいぶ不安ですが、若干Lessをイメージした運営を試行してみるのかと考えています。
学習の強化
発信や学習、外部接点の増加については引き続き注力していきます。ただこの点については、メンバーとのモチベーション差異や課題認識の差異があると思っていますので、対話しながらどのようにするとハッピーなのかはもう少し深掘りを続けていきたいと考えています。
終わりに
この件は自分にとっては良い失敗経験でした。ただ、チームにとって良い失敗経験と言えるかどうかはこれからレジリエンスを発揮してよりしなやかに強くなれるかにかかっています。
簡単なことではないという実感はあるので、引き続き色々と試しながら、また状況を報告出来ればと思います。
読んでいただきありがとうございました。
像の足に鎖の付けた足かせを付けておく。最初象は逃げようとするが鎖が外れない事が分かると暴れなくなる。また一度そうなると、鎖を外して足かせを付けておくだけでも、逃げれないと学習してしまい、暴れなくなる