この記事は、Insurtechラボアドベントカレンダー2026の6日目の記事として執筆しています。
RSGT(Regional Scrum Gathering Tokyo)は、スクラムやアジャイルに関する日本で最大のイベントの一つです。2026年1月7日から9日(DAY0は1月6日から)の期間で開催されます。新年早々に行われるこのイベントについて、参加するまで年越しできないといった声も聞かれます。
我々の組織では、毎年いくつかの講演を見ていますが、特に初参加のメンバーだと何を見ればよいかわからない?どう参加するば良いかわからない。といった声もありますので、今年も、気になる講演を事前にチェックしておきたいと思います。
なお、記載内容は私の独断と妄想で書いていますので、実際の内容と全然異なることも多分にありますので、ご容赦ください。読んでいただくことで、RSGTへのモチベーションがちょっとでも上がることを目的にしています。
DAY0
Beyond Budgeting: Full-Day Workshop with Bjarte Bogsnes
DAY1のキーノートをしてくれるボグネス氏の「脱予算経営」のワークショップが別途申込で開かれます。「脱予算経営(Beyond Budgeting)」は、固定の年間予算による従来型の管理/統制システムに代わる、より柔軟で人間中心・アジャイルな経営モデルを提唱する運動/パラダイムになります。
単に「年間予算をやめてローリング予測にすればいい」というわけではなく、経営文化 (リーダーシップ、権限移譲、自律性、透明性) の大きな変革が必要と説いており、多くの企業で “思考様式 (mindset)” の変換が最大のハードルとなるそうです。
「アジャイル経営」とも言える考え方を学び、思考実験ができるワークショップだと思います。(仕事の調整がつけば参加したいと思っていますが…)
(非公式ハイブリッド開催) RSGTを一緒に楽しむ仲間を増やすための会
毎年、KAGの小笠原さん中心に実施してくれているDAY0企画です。全く初めてだと何の会かもわからず、参加を逃している方も結構いらっしゃいますが、初めての方こそ、ぜひ参加してほしい会です。
RSGTが終わってからも色々な場所で、「このDAY0の企画で会った方と繋がって、新たな出会いがあったり、カンファレンスに馴染みやすくなった」という声を聴くので、怖くてもとりあえず参加することをお勧めします。
RSGTは発表も素晴らしいですが、「廊下が一番良い」という声もあるほど、ギャザリングに力を入れています。
セレンディピティに満ちたイベントですので、ぜひDAY0に参加して楽しんでいただければと思います。
DAY1
An introduction to Beyond Budgeting – Business agility in practice
DAY0のワークショップでも書いたボグネス氏の「脱予算経営」についての説明になります。詳細はDAY0の説明をご覧ください。
今年のキーノートは脱予算経営のボグネス氏やクネビンフレームワークのスノーデン氏、ウルシステムズの漆原さんと経営や組織とアジャイルに関連するテーマかなと思っていますが、実務から見たリアルな話が聞けたり普段の仕事に対して少し違った角度から見れるヒントをもらえるのかなと楽しみにしています。
デイリースクラム Deep Dive
アトラクタのRyuzeeさんのDeep Diveシリーズ第6弾になります。RyuzeeさんのHPはいつも参照させてもらってたり、他のDeepDiveシリーズもスクラムチームで度々視聴することがあるので、非常に楽しみな内容です。
ちなみに個人的には「スクラムにおける「完成」とはなにか?」が好きです。
「アウトプット脳からユーザー価値脳へ」がそんなに簡単にできたら苦労しない
今年、「NOを伝える技術」を発刊されたAkiさんの発表になります。本の中でもステークホルダーと価値の共通理解もち、その実現コストを具体的に共有することで建設的な意思決定に結び付ける旨が書かれていて、そういった具体例などを用いながら、OUTPUT脳とOUTCOME主義の断絶や橋渡しのポイントを説明してくれるのではないか?と想像しています。
The Courage to Continue and Cultural Intelligence — Insights from Agile Practice in Japanese Enterprises
私の発表になります。(会社のメンバーと一緒に発表)。今年は英語登壇ということでちゃんとできるか不安ですが、現在内容を詰めている最中です。野村証券さんのイベントで説明させていただいた資料を基に修正して発表しようと思っていますが、海外から来てくれた方が喜んでくれるような発表ができるように頑張りたいと思います。発表、初日の最初なのが嬉しいです。
複雑さを受け入れるか、拒むか?―事業成長とともに育ったモノリスを前に私が考えたこと
ばやしさんの発表になります。プロダクトの複雑さに向き合い続けるエンジニアリングの実践例ということで、プロダクトの仮説検証を進める中で実際の開発/エンジニアリングをどのように進めたかといった実務のお話が聞けそうと楽しみにしています。
ちなみに個人的には去年のXP祭りの「個人事業主型開発からの脱却」が好きでした。
よくわからないことが多い場合の計画づくりのコツ
レッドジャーニーのアジャイルコーチの洋(よう)さんからの発表になります。アジャイルな計画づくりのポイントについて説明してくれるようです。
アジャイルな計画づくりと言えば、マイク・コーンさんの名著『アジャイルな見積もりと計画づくり』を思い出しますが、リアルな仕事の場面では、こういった内容をステークホルダーに伝えられず困っているので、ヒントが見つかると良いなと思います。
ちなみに個人的にはRSGT2021の「組織がアジャイルになっていく道を歩んだ時、「少しだけうまくやれたこと」と「うまくやれなかったこと」」が好きでした。
「リリースファースト」の実感を届けるには〜停滞するチームに変化を起こすアプローチ〜
KINTOテクノロジーズの内藤さんの発表です。Findyさんで発表された「見える化で得られた「リリースファースト」 の現状と今後の課題」についての最新状況を聞けると思います。
スライドを見る限り、指標を用いながら局所的な改善ではなく、VSM(Value Stream Mapping)で全体を見ながらAIを絡めて改善していった事例だと感じたため、非常に興味があります。
ちなみに、内藤さんと現在Findyの高橋さんがビズリーチ時代にRSGT2023で発表していた『「エセ自己組織化」症候群から脱却し、約束を守るプロフェッショナルなアジャイルチームになるには -アジャイル時代のマネジメント進化論』が個人的には好きです。
AI as Teammate: Redefining Agile for Human-AI Collaboration / AIをチームメイトに:人間とAIの協働のためのアジャイル再定義
マレーシアのアジャイルコーチのTze Chin Tang氏の発表です。
AI拡張型ソフトウェア開発(AI-Augmented Software Engineering)の時代に、アジャイルやスクラムをどう適用していけばよいか、AIが単なるツールではなく、チームの一員になりつつあるという点について、「対話」の重要性などを説明してくれると考えています。
過去の発表を見ると、組織トランスフォーメーションや学習についての発表が多かったため、AIがどのように組織変化や学習に影響を与えるか?みたいな内容が話されるのではないか?と予想しています。
「要はバランス」を見極める – ADR実践で目指す技術的卓越への道
サイボウズのえわさんと榎原さんからの発表です。ADR (Architectural Decision Record)の運用の話ということでとても気になっています。AI時代にドキュメントをどうするか?という点は急激に変更すると思っているので、そんな中で私ももうちょいADRを取り入れたいなと思っていたので、内容楽しみにしています。
ちなみに、えわさんの発表は一昨年のRSGTの「約30年の時を超えたデザインパターンの価値 -現代のスクラムチームの開発者がGoFのデザインパターンを学び直し得たもの」が好きです。
Sprint Reviewで、ビジネスと開発の「当たり前」を同期する
マネーフォーワードの富田さんとヘンリーの田口さんの発表になります。スプリントレビューの中で開発側とビジネス側がどう協業していったのか。また言語の壁をどう乗り越えていったのかといった話があるようです。今年のスクフェス福岡で、マネフォさんでのスプリントレビューでの改善の発表があったのでそこからの進化の内容が聞けるのかと思っています。
スクラムマスターがスクラムチームに入って取り組む5つのこと – スクラムガイドには書いてないけど入った当初から取り組んでおきたい大切なこと –
アジャイルコーチのスクラムマスダーさんからの発表です。スクラムマスターがチームに入るときに取り組む5つの事ということで、スクラムマスターとして必見の内容だと思います。
- 「助けて!」と叫ぶ
- 余裕を持つ
- 偉い人とのコネクションを作る
- チームには見せれないインペディメントリストを作る
- 楽しく仕事をする
ちなみに、マスダーさんの発表は個人的にはスクフェス新潟の「アジャイルコーチを名乗る覚悟あなたは何によって憶えられたいか?」が好きです。
The Strategic Answer to GenAI: Empirical Enterprise Evolution
スイスとドイツを拠点とするピーター・ベックさんとアンドレアス・シュリープさんの発表です。
生成AIがビジネスを書き換えていく中で、『AME3(Adaptive Metaframework for Empirical Enterprise Evolution:経験主義的企業進化のための適応メタフレームワーク)』という「経験的コントロール、進化への集中、全体最適化」というドクトリンから成るフレームワークを紹介してくれるようです。また、組織でこれらの概念を適用する方法を示す実例を紹介してくれるようです。サイトにはプラハでの講演内容がついていたので、興味があれば見てみると良いと思います。
生成AI活用システムにおけるテストの実践〜テスト設計・分析を中心に〜
aki.mさんの生成AIを用いたテスト設計についての発表です。スクラムフェス新潟で話してくれたテスト設計のアップデート版ということで非常に楽しみです。新潟で見た際もさっそくチームにシェアした内容なので、個人的にはかなり期待値が高いです。
ちなみに、aki.mさんの発表は個人的にはXP祭り2023の「eXtreme mental health」が好きです。
EBM実践のカタ —— 実践とゴールと計測を結びつけるアジャイルのありたい姿へ
「プロフェッショナルアジャイルリーダー」や「More Effective Agile」等たくさんの本を訳されているアジャイルコーチの長沢さんの発表です。EBMを今すぐに始めるための実践の「カタ」を紹介してくれるということでとても楽しみです。内容も良いですが、更に長沢さんのプレゼン資料は本当にきれいだなーと思っていつも見ています。
去年のRSGTの発表「IMPACT !! ゴールとアウトカムからはじめる経験的アプローチ」もとてもきれいにまとまっていてすごかったです。
「違う現場で格闘する二人」——社内コミュニティがつないだトヨタ流アジャイルの実践とその先
トヨタの竹内さんと藤田さんからの発表です。トヨタさんと言えば、いわずと知れた大企業ですが、そんな大企業の中で、別々の組織、ロールのメンバーが出会いながら社内コミュニティとして発展していくという話は気になっています。社内コミュニティは興味があるので楽しみにしています。
スクフェス三河2025でも「トヨタの未来を切り開く!トヨタアジャイルチャレンジで繋がる未来」というテーマでお話いただきましたが、その続きの話が聞けると思っています。
SmartHRスポンサーセッション
SMART HRの和田さんからの発表です。スマートHRは組織的なAgileな事例で進んでいるイメージがありますし、和田さん自身もコーチングの本「成長を支援するということ」等を訳されており、気になります。
続・もっと!「契約交渉よりも顧客との協調を」 〜成果報酬型やってみた結果とその先の挑戦〜
クリエーションラインのさささんの発表でした。さささんの発表もいつも楽しみにしていますが、今回の発表は、SIビジネスをやっている身としてはとても興味があります。
スクフェス大阪の時もものすごく良かったので、また楽しみにしています。下記がスクフェス大阪で公演があった「もっと!「契約交渉よりも顧客との協調を」 〜協調を助ける契約と関係づくり〜」になります。
「トヨタの車載制御ソフト開発で実現した『品質を落とさず開発スピード向上』- スクラム×TDD実践の全貌」
トヨタのMUTOさん、SHIBATさんからの発表です。スクラム×TDDで品質高く開発スピードを上げたというお話のようです。トヨタさんでの具体事例ということで楽しみです。
Why Scrum Fails: It’s Not the Teams, It’s the System
ドイツのアジャイルコーチのクリス氏の発表になります。アジャイルを「Authenticity」という視点から再定義するという内容です。「関係性」を原動力として、アジリティをどう高めていくかというアジャイルリーダーシップに関する内容が聞けると思います。
心理学を学び活用することで偉大なスクラムマスターを目指す − 大学とコミュニティを組み合わせた学びの循環
コニカミノルタの原田さんからの発表です。アジャイルコーチが心理学や学際について学ぶことについて説明してくれるようです。原田さんも色々な行動をされて学習を発表していて、すごいなーと尊敬しています。
ちなみに原田さんの発表は個人的にはふりかえりカンファレンスでご夫婦で発表されていた「保育とふりかえりをコネクト!保育の会議が「問題対私たち」に変化した事例を紹介します」が好きです。
自動車部品製造の大企業でクラウドサービスを製品化するまで
DENSOの有竹さんからyuriCargo(ゆりかご)プロジェクトに関してのプロトタイプ立ち上げからPOとしての悩みや解決策について発表いただきます。新規事業立ち上げのプロジェクトであり、本当に色々と問題があったんだと思いますが、事業として進められていてすごいと思います。エンジニアからPOへのキャリアチェンジというのも気になります。
「私の要求最優先!あなた後回し」そんな対立を超えてビジネス、開発、顧客が本当に欲しかったものを全両立するプロダクト組織の作り方
witch&wizardsの森さんの発表になります。森さんの発表は自身の考え方の変容につながった発表が多数あり、何回か見直していますが、いつも本当に素晴らしい発表だなと思っています。
今回はトレードオフ構造についてということで昨年のRSGTの続きのようなものなのでしょうか?(「あの人たちが協力的ならうまくいくのに!権限もないから進められない!」トレードオフの連続制御を通して、対立を協力に変えるプロダクトマネジメントチームを実現するぞ)
ちなみに森さんの発表は個人的にはRSGT2023で発表されていた「私考える人、あなた作業する人」を越えて、プロダクトマネジメントがあたりまえになるチームを明日から実現していく方法」が大好きです。
スクラムマスターは独りじゃない!コミュニティが創る「回復と成長の場」
アジャイルコーチの天野さん、Emiさん、川口さんからコミュニティについての発表になります。私自身アジャイルのコミュニティがあったおかげで今までやってこれたので、とても気になります。
天野さんと川口さんでの下記コミュニティについての記事はものすごく好きです。
Case study: looking at the agile manifestos from an Organization Development and polarity management lens – managing tension in agile context
シンガポールを拠点に活動されているアジャイルコーチのジェロームさんからの発表です。
組織やチームの中でしばしば対立する2つの価値や立場を扱い、両者を適切に管理していく手法であるポラリティ・マネジメント(Polarity Management)のレンズを用いてアジャイルマニフェストやソフトウェアクラフトマンシップマニフェストを探究するという内容のようです。気になります。
俺たちは本当に分かり合えるのか? ~ PdMとスクラムチームの “ずれ” を科学する
アジャイルコーチでありソフトウェア工学研究者のぼのたけさんからの発表です。今年、「なぜイノベーションは起こらないのか」を訳されていて、ご活躍ですが、今回の発表は、今年のRSGTの発表でPdMとスクラムの関係の研究結果の続きになるんだと予想しています。実務に役に立つリアルな研究の状況が聞けるのはとても楽しみです。
今年のRSGTの内容を事前にチェックしておくと、より楽しめると思います。
Beyond Budgeting Dialogue: Theory meets Practice in Japanese Context
キーノートをしてくれたボグネス氏とのナイトセッションになります。(こちらは日本語訳はないそうです)
ボグネス氏の本「脱予算経営への挑戦」について訳された早稲田大学の清水教授とGitHubの服部さんがBeyond Budgeting、アジャイルマネジメント、そして日本の組織文化の交差点を探るとのことです。
[ナイトセッション] FEEDBACK 1 (F1) 2026 第1戦 羽田GP
フィードバックを上手にできる腕を競う大喜利形式の楽しいセッションです。下記はスクフェス福岡2023の時のものです。
[ナイトセッション] Innovation Sprint 2011から15年 – 野中郁次郎とJeff Sutherlandの邂逅が遺したもの
RSGTの最初となる15年前のInnovation Sprint 2011からのふりかえりを日本でアジャイルを切り開いていった先人たちが話すという内容です。川口さん、平鍋さん、森崎先生、長山さんといった豪華なトークが聞けます。
今年のアジャイルジャパンでも平鍋さんのクロージングキーノートで同じような歴史のふりかえりがあったので、また違う軸で聞けるのは楽しみです。
おわりに
ということでRSGTのDAY0,DAY1の見どころでした。皆さん気になる講演はありましたでしょうか?
ぜひ関連する動画等も見ていただき、RSGTへのモチベーションを高めていただければと思います。
DAY2についてはまた次回書きたいと思います。読んでいただきありがとうございました。










