ミドルから始める変革_冒険する組織のつくりかたレビュー⑧

 安斎勇樹さんの『冒険する組織のつくりかた』から、今回は「KEY18 ミドルは変革の中枢。マネジャーこそ『自分』を尊重する」について考えます。組織変革におけるミドルマネジャーの重要性やリーダーシップの在り方について、ポイントを絞って紹介します。

ちなみに前回の記事はコチラです

1. ミドルマネジャーが変革を握る理由

 本書では、組織変革のカギを握るのは「中間」にいるミドルマネジャーであると強調しています。トップが方針を示すだけでは不十分で、ミドルマネジャーが現場レベルに変革を落とし込み、メンバーが納得できる「自分たちの物語」として伝えるプロセスが欠かせません。安斎氏は、「この変革が自分たちにとってどんな意味を持っているのか」をストーリーテリングすることが、ミドルマネジャーの重要な役割であると述べています。

 私はこの意見には大賛成なものの、どちらかというとトップの概念を変える必要があるのではないかと思っています。例えば「事業部長が…、経営者が…、社長が…、内閣が…、総理大臣が」と何かあると更なるトップに問題を求める所がある気がしています。自分自身、自分と部下、自分が見ているチーム、自分が見ている組織と自分を中心とした範囲でトップマネジメントは出来ると思っています。更なるトップに色々思う所はありますが、更なる上(ステークホルダー)がいないという事はあり得ないので、いつも自分がトップだと認知できる範囲でリーダーシップを発揮することが大事だと考えています。

2. ミドルマネジャーが変革を推進するための力

安斎氏は、変革を推進するミドルマネジャーに必要な3つの力を次のように述べています。

2.1 ストーリーテリング

 変革を「自分たちの物語」に落とし込む力です。本書では、「組織の方針をそのまま伝えるのではなく、『この変革は私たちにとって何を意味するのか?』を語ることが必要」としています。この過程を通じて、メンバーが変革に主体的に関わるようになります。

2.2 越境力

 本書によると、タテ・ヨコ・ナナメ・社外のつながりを構築する力も不可欠です。タテは上司・部下の垣根を越えたつながり、ヨコは他チームのミドルマネジャーとの連携、ナナメは他チームのメンバーとの交流を指します。さらに、社外の知見を取り入れることで新たな視点が生まれます。こうしたつながりが、変革を現場全体に浸透させる基盤となります。

2.3 ネガティブケイパビリティ

 「AもBも」成り立たせる答えが見つかるまで、矛盾を受け入れ続ける力です。安斎氏は「冒険する組織のマネジメントにおいて求められるのは、パラドキシカル(逆説的)な状況をしっくり受け入れ、矛盾を乗りこなしていく力である」と指摘しています。一見相反する目標や意見を抱えながらも、答えを焦らず粘り強く探究する姿勢が必要です。

 これらのスキルの大切さも非常に共感します。ただ、ミドルになっていきなりこれらのスキルが必要と言われても「えっ?」と思う所はある気がしています。自分としては、昔、MBAの勉強をしてた頃の経験や学生時代にオケの練習の指揮をやってたこと等が多分こういったスキルの重要性を感じている所以だと思っています。

 わりと書いてあることは当たり前だと受け入れられる反面、軍事的な大きな企業のミドルマネジメントの場で、これらの事が大事だと気付く機会は少ないと感じています。

 結局はこれらのスキルを重視しながら結果を出すことが大事だと思っていますので、時間はかかるかもしれませんが結果を出し続けていきたいです。

3. おわりに

 複雑性や変動性が高まる中、その影響はまず現場に現れます。現場の感覚を最も理解しているのがミドルマネジャーであり、だからこそ現場と接点を持つミドルがトップマネジメントを担う必要があると考えます。

 2階層上とのつながりやナナメ、ヨコのつながりを意識し、現場から得た知見を組織全体の知識として活用できるようにすることが、今後の大きな課題です。意識的に取り組むことで、組織全体の成長と変革を推進していきたいと考えています。