RSGT2026に参加しよう!(後編)

この記事は、Regional Scrum Gathering Tokyo & Scrum Fest Advent Calendar 2025の11日目の記事として執筆しています。

RSGTRegional Scrum Gathering Tokyo)は、スクラムやアジャイルに関する日本で最大のイベントの一つです。2026年1月7日から9日まで(DAY0は1月6日から)の期間で開催されます。

前回の記事ではDay0とDay1について紹介しました。

今回の後編では、Day2とDay3について気になる講演を事前にチェックしておきたいと思います。

 なお、記載内容は私の独断と妄想で書いていますので、実際の内容と異なることも多々あります。ご了承ください。読んでいただくことで、RSGTへのモチベーションがちょっとでも上がることを目的にしています。

DAY2

From Frameworks to Substrate: Rewilding Agile to Work at Scale

 クネビンフレームワークを提唱したウェールズ出身のデイブ・スノーデンさんのキーノートです。組織的アジリティとは外部から輸入するものではなく、内部から育まれるといった、再野生化(rewilding)というキーワードがポイントということで、組織を自然システムとして扱っていく重要性等が語られるのではと考えています。

 私も『庭師』のメタファーが好きなので非常に楽しみにしています。

アジャイル開発時代の品質マネジメントシステム

 三菱電機の細谷さんの発表です。個人的な感想ですが、2025年にはさまざまな場所で三菱電機さんに会う機会が増えると感じています。また、さまざまな部署の方々がそれぞれ活動し、社外に登壇している姿を見て、JTCの希望を感じました。

 そんな三菱電機さんのAgileの火付け役の細谷さんから、品質ガバナンスについての話を聞けます。同じく大企業の案件を推進する身としては無茶苦茶興味があるテーマで楽しみです。

ちなみに、以下の動画を視聴すると、細谷さんの三菱電機での取り組みの歴史が感じられます。

自己管理型チームの一員となるためのセルフマネジメント:モチベーション編

 カケハシの小田中さんの発表です。モチベーションについて個人のモチベーションをどのようにコントロールするか、さらに、目標が引き出すモチベーションの重要性および、その実例を紹介しながら「自己管理型個人から自己管理型チームへ」とスケールしていく道程を発表してくれるようです。個人にとってもチームにとっても役に立つ楽しみな講演です。

 小田中さんは講演がうまくて、どれもおすすめですが、今回は、「こうしてふりかえりは終わってしまった」をお勧めします。

Mindset Mastery: Switching from Fixed Habits to Embracing Agile

 ヨーロッパを中心に活躍されているアミール・ペレッドさんの発表になります。

 アジャイルを実践する中で多くの人が直面する「固定マインドセットへの逆戻り」という課題に焦点を当てています。グロースマインドセットの重要性を理解していても、日々のプレッシャーや慣れた行動パターンによって、私たちは容易に旧来の思考に戻ってしまうことがあります。

 講演では、『アジャイル・マインドセット・カタ』の使い方を学び、個人やチームが成長を続けるための実践的なアプローチを身につけることができるとのことです。

 組織に持続的な変化を生み出したい方にとって、有益なヒントが得られる内容になると思います。

RALGO AIを組織に組み込む方法 -アルゴリズム中心組織設計-

 デロイトトーマツコンサルティングのkyonさんからの発表です。毎年映像と音声を組み合わせながら、エクストリームな内容を紹介してくれるとても心に残る講演をしてくれています。

 ”AI、データ、プロセス、ツール、プログラムなどいずれかに主体性が宿るのではなく、組織におけるアルゴリズムに主体性が宿ると考え、組織の実態にあった捉え方をします。
そのうえでこれからの時代に加速するであろうAIを中心としたアルゴリズムの発展により、組織がさらに自律性を獲得しやすくするアプローチを提案します。”

といったことがプロポーザルに書かれています。機械にも人にも読める形で、組織をアルゴリズムで考えるという話になると予想していますが、これからの組織や開発において非常に示唆に富んだ内容ではないかと思っています。kyonさんの発表はご自身の組織の47機関の進化を中心に語られるので、過去の内容も一緒に見ておくとより楽しめると思っています。

RSGT2025 フレームワークを生み出すメタフレームワークという考え方 -適応型から生成型へ
RSGT2024 Living Process

RSGT2023 Living Management -Good bye Scrum,  Hello Semilattice-
RSGT2022 Extreme Small Patterns -チームを100倍理解する方法-
RSGT2021アジャイルを忘れるチーム Unlearn Agile
RSGT2020 チームの再定義 -進化論とアジャイル-
RSGT2019 超Scrum入門〜未完成フラクタルと15minSprint〜 
RSGT2018 Scrumが難いのは幻想RSGT2017 Scrumありがとう、 そしてさようなら
RSGT2016 Scrum,Test,Metrics

スクラムガイドが築いた基盤の上に — Expansion Packが示す現代プロダクト開発への補完的視点

 スクラムガイド・エクスパンションパックの日本語訳者であり、Scrum Inc. Japanのアジャイルコーチでもある山本さんと内山さんによる発表です。

 スクラムガイド・エクスパンションパックの解説ということで、スクラムを実施している人にとっては必見の内容かと思います。科学的基盤の話など、更に深い話がきけると思います。

 以下はスクラム祭り福井トラックで話があった「Scrum Guide Expansion Pack徹底解剖」の資料です。一読しておくとより楽しめると思います。

Scrum Guide Expansion Pack 徹底解剖

2025/10/4 スクラム祭り 2025 福井セッション 川口恭伸さん、長沢智治さん、和田圭介さん、内山遼子さんと5名で講演

コミュニティ文化を組織に根付かせる〜推進者とバトンを受け取った実践者が語るコミュニティの価値と持続可能性への道筋〜

 ログラスの永井さん、飯田さんから、コミュニティと会社の文化について発表していただけます。「コミュニティが個人と組織にもたらす具体的な価値」「組織内でコミュニティ文化を根付かせる実践的な手法」「コミュニティの価値を枯渇させずに存続させる方法」とかなり気になる内容になります。

 永井さんの下記スクフェス2025の登壇ブログを読むとログラスさんのコミュニティに関する良い文化や事例が伝わるので、またアップデートされた内容楽しみにしています。

スクラムフェス新潟2025参加&登壇レポート

Effective Learning with Training From the Back of the Room (TBR)

 アジアのアジャイルコミュニティで活躍されているクアン・グエンさんとシルビア・ンさんのワークショップになります。アジャイルがうまくいかない理由の多くは、 “学び方” がアジャイルになっていないからで、Training from the BACK of the Room(TBR)「教えない教え方」は、学びそのものをアジャイルにする方法とのことで、個のワークショップでは、TBRの基盤となる6つの学習原則を紹介し、すぐに自分のトレーニングやワークショップに取り入れられる実践的なアクティビティやテクニックを体験できるとのことです。

 スクラムマスターやコーチ、ファシリテーターにとってとても気になる内容だと思います。

書籍:教えない教え方 アクティブラーニングを実践する脳にやさしい授業と65のアクティビティ

田舎で20年スクラム(後編):一個人が企業で長期戦アジャイルに挑む意味

 リコーITソリューションズの陳も参加の発表です。恒例の田舎で○○年スクラムです。同じような情報系子会社の私としては毎回とても勇気をもらえ、とても楽しみな発表です。SIerでAgileを実施している人にはぜひ見てもらいたい内容です。

 個人的にはスクフェス大阪2023の『田舎で17.5年スクラムやってもままならないから面白いんじゃん』がお勧めです。

Scrum を支える理論

 永和システムマネジメントの平鍋さんからの発表です。ジェフサザーランドさんが2024にFirst Principles in Scrum: Teams That Finish Early Accelerate Fasterで、Scrum の基礎となる理論基盤を整備しており、そこからいくつかの内容を説明してくれるとのことです。平鍋さんは日本でAgileを広げてきた一人ですので、その解説はとても楽しみです。山本さんと内山さんのエクスパンションパックの話と合わせて、スクラムの基盤の話を深く理解するためにお勧めのセッションです。
 平鍋さんのIPAシンポジウムでのAgileの解説動画はアジャイル始めた頃、よく見させていただきました。当時は、まだこんなにAgileの動画が公開されていなかった為、個人的にお世話になった動画です。

QAフローを最適化し、品質水準を満たしながらリリースまでの期間を最短化する

 クラスター株式会社のエンジニアのYuki Shibazakiさん(shibayu36)からの発表です。QAフローをエンジニアとしてQAとともに見直していったという話で、品質基準の設定や制約条件を理解しながら、QAとエンジニアが共に進めていった事例とのことです。個人的に品質改善や開発フローの改善は非常に興味があるため、自チームのエンジニアメンバーと一緒に見れたらと思います。

The Cynefin Co. x Scrum Inc. Presents: Future Backwards: The State of Agile Adoption in Japan

 Cynefin社のジュールズ・イムさんとScrum Inc.のクロエ・オニールさんのワークショップになります。「フューチャー・バックワーズ」というワークショップとのことです。ちょっと調べると、現在の状況を描く → 最悪・理想の未来を描く → そこから逆に現在までの経緯を考える といったことを考えるワークショップで、参加者同士の視点を共有して対話するワークとしても有効とのことです。

チームみらいの中で見えた、自律的に動く組織の姿──“手を動かす”が導いた自己組織化

 クリエーションラインのくまごろーさん、翔泳社の岩切さん、デジノ株式会社のトミーさんの発表で、チームみらいでの活動から自律型組織のヒントや協働の仕組みについて考察していく内容とのことです。安野さんの話はアジャイルジャパン等でも聞いていてとてもワクワクしたので、また実際にチームとして経験された方の意見も気になります。

 下記はアジャイルジャパンでの安野さんの資料です。

No Title

No Description



AI時代のアジャイルチームを目指して-“スクラム”というコンフォートゾーンからの脱却-

 ホロラボの及部さんからの発表です。AI時代のアジャイルチームということで、今年何回か聞いていたAI時代のスクラムチームについてのアップデートされた話が聞けると思います。今までの集大成の話が聞けると思うと、とても楽しみです。下記資料はスクラム祭りの時の資料です。

 及部さんの話はいつもとても分かりやすい中で、カウンターカルチャー的なロックな要素や問いも埋め込まれていて、見ている側にも訴えかけるプレゼンで、とても好きでよくチームメンバーにも紹介しています。今回も期待しています!

AI時代だからこそ考える、僕らが本当につくりたいスクラムチーム / A Scrum Team we really want to create in this AI era

■セッション概要 生成AIの登場により、ソフトウェア開発はかつてないスピードで変化しています。 コーディングやドキュメント作成、資料作成といった”作業”は加速度的に効率化が進み、Vibe CodingやAgentic Codingのように、開発の役割や働き方そのものを揺さぶる変化も生まれています。 …

プロダクトバックログで学ぶリアルオプション入門

 アトラクタのKIROさんからの発表です。「Tidy First?」を受けて、スクフェス金沢2025でお話された「価値見積もり入門ープロダクトバックログで学ぶリアルオプション事前準備編」の続きの話だと思います。KIROさんにはお勧めの本としてコーポレートファイナンスをお勧めしてもらってから、まだ上巻の1章を読んだきり積んでいるので、この機に読みたい(そろそろ読まねば)と思います。

 個人的なKIROさんのおすすめ動画はRSGT2021の「スクラムをスケールするとはどういうことか」です。

1万人を変え日本を変える!!多層構造型ふりかえりの大規模組織変革

 SHIFTの森さんの発表です。ふりかえりで日本を変えるということで、1チームを変える、50~100名規模の会社を変える、101~300名規模の会社を変える、301~10000名規模の会社を変えるといったスケールを考える上での具体的な変革のやり方について説明・紹介いただきます。

 非常に熱いテーマで楽しみにしています。森さんには、自分の会社でも「ふりかえり」の講演をしていただきましたが、ギアチェンジされて進まれていて、尊敬です。

 ちなみに森さんの講演はRSGT2023の「Effective Retrospective++」が個人的なお勧めです。

DAY3

オープン・スペース・テクノロジー(Open Space Technology)

 RSGTで何が良かったかと聞かれると、何人かはOSTと言うくらい、OSTに力が入っています。オープニングキーノート(もしくはDay0)から2(3)日間講演を聞いたり、場を共有した、経験を同じくする人たちとOSTは、RSGTならではの盛り上がりがあります。またアラウンド83(だいたい83年生まれのコミュニティーリーダー、アジャイル推進者の方々)のセッションは、毎回、RSGT/OSTへの愛を感じますw。

 下記は2025年のセッション(OSTの歌)になります。

「人と話す時に1番大切なこと」 ~コミュニケーションを再定義する~

 オフィス福原の美砂コーチによる、コミュニケーションの実験企画とのことです。アジャイルラジオでよく「美砂コーチ」のコーナーを楽しんで聞いていたので、実際にワークショップに参加できるのはとても楽しみです。

アジャイルラジオ:みさコーチと、転職時の自己分析について語る
アジャイルラジオ:美砂コーチに相談しようのコーナー(和田編)
アジャイルラジオ:続・美砂コーチに聞いてみよー

Cowtopia II: Surviving on Mars — Embodying Scrum Values in Chaos and Collaboration

 シンガポールを拠点にするマイケル・オンさんと アンドレ・タンさんのワークショップです。混乱 (Chaos) から 調整 (Coordination) を経て、真の 協働 (Collaboration) へと進化するプロセスを体感できるワークということです。昨年実施したCowTopiaの進化版ということです。

「ふりかえり手法を試そう!」で始める3桁人のギャザリング体験~初めましての人あつまれ!~

 nambuさん、森さん、ハラディーさん、おざきさんでの「ふりかえり手法を試せる」ワークショップになります。チームを入れ替えながら複数のふりかえり手法が試せることで、普段出来ないふりかえり手法が経験できたり、ワークショップを実施するメンバーと仲良くなったりできる鉄板のワークショップです。今年複数のスクフェスで同様のワークショップを実施しています。私は三河で参加しましたが、良い雰囲気で出来るので、初めての方でもお勧めです。「ふりかえり手法を試そう」で検索いただけると体験者の記事が色々と出てくるので、気になったら検索してみてみると良いと思います。

AI駆動開発の時代〜小さなチームで世界を変えよう〜

 ULSコンサルティングの漆原さんからのクロージングキーノートです。AI駆動開発の可能性と期待、AI時代に活躍できるエンジニアのスキルや新たなキャリアパスについて解説とのことです。ここ最近は、AIやAIに伴う今後の働き方やキャリアについて深く考えることが多くなったので、クロージング楽しみです。

 RSGT2024のナイトセッションでの漆原さんの発表が感動的で、勇気をもらえたので、また、楽しみにしています。

おわりに

ということでRSGTのDAY2,DAY3の見どころでした。皆さん気になる講演はありましたでしょうか?

 ぜひ関連する動画等も見ていただき、RSGTへのモチベーションを高めていただければと思います。

読んでいただきありがとうございました。