“イベントに参加して、ただ話を聞くだけじゃもったいない。”
そう実感できたのは、Scrum Festで登壇者と一言交わしたことがきっかけでした。
対面イベントに感じていた「高いハードル」
イベントに参加するのが億劫——これは、特別な感情ではありません。特にエンジニアやプロダクト開発に関わる方の中には、イベントの価値を理解しつつも、
「何を話せばいいかわからない」
「場違いだと思われそう」
といった思いから、なかなか一歩を踏み出せない人も多いのではないでしょうか。
私自身もその一人でした。オンラインイベントには参加経験がありましたが、対面イベントは今回が初めて。Scrum Fest(以下スクフェス)に参加する直前まで、会場の熱量や雰囲気、登壇者との距離感に気後れしていたのを覚えています。
それでも参加を決めた理由と、準備したこと
そんな私がスクフェスに参加することになったのは、職場の上司からのひと言がきっかけです。
まさか自分がイベントに足を運ぶなんて思ってもいませんでしたが、上司の言葉に背中を押され、思い切って申し込むことにしました。とはいえ、いざ会場に足を踏み入れると、周囲は自信に満ちた参加者や経験豊富な登壇者ばかり。初心者の自分には「質問をする勇気」など到底ありませんでした。
そこで、ある工夫をしました。それは、“質問をする”のではなく、“感想を伝える”ことをゴールにする、ということです。
「質問」より「感想」が会話の第一歩に
私が実践したのは、以下のシンプルな行動です。
- 興味のあるセッションを前もってチェック
- 話を聞きながら「面白かった点」「驚いた点」「自分でもやってみたい点」をメモ
- 休憩中に、登壇者に「感想を一言だけ」伝える
このとき特に印象に残ったのが、保育士さんの現場事例を紹介したセッションでした。
保育士の方々が、業務中の「数秒」でも子どもたちの状態について情報共有をしておくと、業務終了時の振り返りが圧倒的にスムーズになる——。
この話は、私の中で「スクラムやアジャイルが、ITの枠を超えてあらゆる現場で機能する手法なんだ」と認識を広げてくれるものでした。
そのセッション後、登壇者の方に話しかけました。

「たった数秒の気づきの共有が1日のふりかえりにインパクトを与えるなんてすごいですね」
たったそれだけの一言でしたが、登壇者はにこやかに返してくださり、そこから5分ほど、保育現場でのふりかえりの工夫や「観察を共有する文化」の大切さについて話を聞かせてくださいました。
さらに、登壇者の方は「この事例を他業種の人に話したとき、似た課題感を感じるとよく言われるんです」と教えてくれました。そこから、「どうすれば日常的な気づきを無理なく言語化できるのか」や、「時間の長さより“いつ”ふりかえるかが重要」といった深いテーマに話が広がっていきました(※詳細はRegional Scrum Gathering Tokyo 2025 提案ページや、登壇者のnote記事をぜひ読んでみてください)。
この経験から学んだのは、イベントでの会話は決して長く深くなくていい、ということです。
話しかけるハードルを自分で上げすぎていたのは、
「何か有益なことを言わなきゃ」
「相手の時間を奪ってしまうかも」
といった無意識のプレッシャーでした。
でも、実際は——
- 感想をもらってうれしい登壇者は多い
- 一言話せば、会話の糸口が自然に見つかる
- 無理に会話を広げなくても、「話しかけた事実」だけで得られるものがある
この小さな一歩は、後々まで残る体験となりました。
参加後の自分に起きた変化
スクフェスが終わった後、私は職場の仲間にこんな話をしました。
- 保育士の現場で活きるアジャイルの知見
- 感想を伝えるだけでも登壇者との対話が生まれること
以前は、イベントは「自分が学ぶ場」とだけ捉えていましたが、今では「学びを人に伝える場」にもなり得ると感じています。
この変化は、イベントに“なんとなく”参加するだけでは得られないものでした。
イベントに行くなら「話すこと」をゴールにしてみる
イベントの目的は人それぞれです。ですが、もしこれからScrumFesのようなカンファレンスに参加する機会があれば、ぜひ「一言だけでも誰かに話しかけること」を目標にしてみてください。
準備はシンプルです。
- 自分が共感したポイントをメモする
- 感想を相手に伝えるだけでOKとする
- 無理に質問しなくていいと割り切る
それだけで、イベント参加の価値が一段階高まります。
おわりに
スクフェスは、登壇者と話すという小さな行動を通して、自分の意識も知識も大きく変わったイベントでした。
イベントでの交流は、技術的なアップデートだけでなく、自分自身の姿勢や周囲との関わり方にも影響を与えるものです。
そして何より、「自分はイベントを楽しめる側の人間だ」と思えるようになったこと。それが、今回の一番の収穫でした。
「一緒に行ってみない?」